痛みは気分によっても変化します。

痛みは絶対的なものではありません。
気分によってすごく痛く感じたり、あまり痛くなかったりした経験はありませんか?
痛みは心の状態と深く関係しているのです。

ゲートコントロール学説とは

痛みの刺激は感覚神経を通って脊髄に伝わり、そこから脳へ伝えられます。
ところが同じ刺激でも痛みを強く感じたり、そんなに痛くないということがあります。

たとえば、膝をぶつけて痛くてたまらなかったのが、テレビのバラエティ番組を見て笑っていたらすっかり痛みを忘れていたという経験はありませんか?
番組が終わって膝のことを思い出したら再びズキズキと痛み出したりとか。

こういった現象はゲートコントロール説で説明がつきます。
どういうことかというと、抹消神経から脊髄神経へと痛みが伝わるときに、脊髄に痛みをコントロールするゲート(門)があって、痛みの情報を脳へ伝えるかどうか調節しているというのです。

ゲートが開いているときはうんと痛く感じ、ゲートが閉じているとあまり痛みを感じなくなるというわけです。

ゲートコントロールと気分

このゲートの開閉は様々な要因によって調節されているのですが、気分や感情によっても影響を受けます。気分の良いとき、安心しているとき、平和な気分のときはゲートは閉じられます。

不安な気分のとき、ストレスがいっぱいのとき、悲しい気分のときなどはゲートは開かれます。
また、感覚神経には太い神経と細い神経があり、両方とも痛みの情報を伝えますが、太い神経は振動や触覚なども伝えます。
そしてこの太い神経を伝わる情報が痛みのゲートを閉じるように働くことがあります。

体をぶつけると自然にそこに手を当てます。ぐっとぶつけたところを手で押さえて痛みをこらえたりします。手でおさえる刺激が痛みのゲートを閉じる方向へと働くのです。

子供が転んで膝をぶつけたら、痛い痛いと泣きます。お母さんは手を当てて「痛いの痛いのとんでけー」と唱えます。そのうちに子供はけろっとしてまた走り回っていたりします。

優しく触れる刺激が痛みのゲートを閉じ、痛みを感じにくくします。
また、子供は安心した気分になり、それによっても痛みのゲートが閉じます。

また脳が痛みを感じると、脳から脊髄に対しゲートを閉じるように命令がいく場合もあります。
痛くて泣くことで、ゲートが閉じるように働くのです。
人間の体はうまくできているなぁと思います。

ストレスとゲートコントロール学説

強いストレスにさらされていると、痛みのゲートコントロール機能がうまく働かなくなってしまいます。
痛いから、その痛み自体が新たなストレスになり、さらに新たな痛みを作り出します。まさに痛みの悪循環です。

そのような状態だと、通常では痛くないような刺激であっても、脳に痛みとして刺激の情報が伝わってしまうのです。
患者さんを診ていて、触ってみてつらそうだなーと思っても本人はたいしてつらく感じていなかったり、そんなに筋肉も固まっていないしバランスも悪くないのに、本人はすごく痛みを感じているということがあります。

軽く触れるだけでもものすごく痛みを感じる状態の人は、たいてい強いストレスにさらされて緊張状態にあります。
不安や緊張が緩和されると、その場で痛みが和らぐということがよくあります。

坐骨神経痛の場合とゲートコントロール学説

坐骨神経痛というのは症状名で、下肢(坐骨神経の支配領域)に痛みやしびれが出る症状です。人によって「重苦しい」「痛い」「電気が走る感じ」「感覚がおかしい」など症状の出方も様々です。

中でも、痛くて歩くのも困難な坐骨神経痛の患者さんは、病院へ行ってもはっきりした原因もわからず、効果的な治療法もなく、この先の不安がいっぱいで、すごいストレス状態にあります。

「手術を受けなくてはならないのか」、「このまま痛みが治らなかったらどうしよう」、「歩けなくなったらどうしよう」そういった不安で一杯になっています。

当院では、坐骨神経痛の原因について身体の生理面、心理面から詳しく説明します。患部の血流が回復すると症状も改善します。そのためにどうしたらよいかという話をすると、多くの方はそれだけで安心してくださいます。
説明を聞くことによって安心し、それだけで痛みが軽減するというケースもよくあることです。

心と体の痛みとゲートコントロール学説

ゲートコントロール説は唯一の痛みの防御機構ではありません。
他にも脳内のホルモンや、神経伝達物質によって痛みが軽くなることが知られています。

ただ人体に備わったそれらの痛みの抑制機構に、なんらかの形で心の状態が関係しています。
体の痛みは心の痛みでもあります。
心の痛みを抑圧し続けた結果、体の痛みとして現れているケースもあります。

操体法の創始者、橋本敬三先生は息・食・動・想(呼吸・飲食・動作・精神活動)の4つを、健康に関する自己責任行動として挙げています。
「想」については「感謝の気持ち」が最も大切だと言っています。
「ありがたい」という感謝の気持ちがいつも湧いている精神状態が、健康で自然なあり方だというわけです。

「ありがとう」とゲートコントロール学説

健康で長生きしている人のインタビューなどを見ると、皆さん必ずと言ってよいほど感謝の言葉を口にしています。周りの人やものに対する感謝、食べ物に対する感謝、生かされていることに対する感謝。

ジャングルなどで自然とともに暮らしている人たちをテレビなどで見かけると、自然に対する感謝の祈りをささげながら生活しています。道徳とか宗教とか関係なく、「感謝」というものが人間としてごくごく自然な状態なのかなと思ったりします。

感謝の気持ちになれなければ、まずは言葉から始めてみてもよいでしょう。
「ありがとう」「ありがとうございます」「ありがたい」そのような言葉を口にしていると言霊の力で現象が変わります。
自分の体に対しても「ありがとう」の言葉をかけるとよいです。

痛くてたまらないときこそ、こんなに痛くなるほど今まで頑張ってくれた自分の体に対して「ありがとう」とねぎらいます。痛みのゲートコントロール機構もしっかり働いてくれるようになるに違いありません。

【院長のお薦めの本】

釈迦の教えは「感謝」だった
小林 正観
4938939428