ぎっくり腰など、痛みが強くて動けない患者さんのときほど、操体法の基本に忠実に従います。

操体法で最初にやることは患者さんが楽な姿勢(ポジション)を探すことです。
実はこのことは私は師匠から教わりましたが、あまり操体法の書籍などでは触れられていないように思います。
(私が気づかなかっただけかもしれませんけど。)

患者さんが少しでも楽じゃない姿勢で操体法の操法をやってもあまり良い効果を望めません。
まずは楽な姿勢が見つかったら、その姿勢から気持ちよい動きを探します。

※最初から気持ちよさを見つけにいくと、すぐに見つかることもありますが、なかなか見つかりにくいことがあります。
そんなときこそ基本に返り、まずは楽な(不快でない)姿勢を探します。

一つの気持ちよい動作を味わうごとに楽な姿勢もどんどん変化します。
最初楽だった姿勢が不快になってくることもあります。
その都度楽な姿勢を確認し、そこから気持ちよさを探していきます。

重症のぎっくり腰

先ほどこられたぎっくり腰の患者さんの話です。 20代の介護士の女性です。

昨日ぎっくり腰をやって、寝返りもうてないほど痛くて、整形外科に行って筋肉の痛み止めの注射をしてもらったけれど痛み止めが切れたら痛いということで、来院されました。
昨日よりは多少は動けるけど、まだまだ痛くて、仕事も休んだとのことでした。

皮膚の操体法

まずは楽な姿勢探しです。
あお向けは痛い。膝を立ててもちょっとつらい。なので仰臥位はNGです。
ここであお向けのまま、操法をやったりしても効果は出にくいでしょう。

次に側臥位(横向きの姿勢)をとってみると楽ということでした。
患者さん自身に動いてもらっても、どう動いても痛みがありますので、皮膚に対して他動的にアプローチすることにしました。

臀部の皮膚を仙腸関節を圧迫するような方向に動かすと「きもちいいです!」とのこと。
そのまま数分間、気持ちよい感覚が薄れるまでしっかりと味わいました。
(右上の横向き 右臀部へのアプローチ)

オリジナル操体法

ここからつま先上げ操法をしました。
つま先上げは、骨盤の回転方向により、前屈系と後屈系のまったく正反対の動きになります。
後屈系のつま先上げは痛くてできなかったので、(たいていギックリの人はこの動きはイヤです)(後屈×)

なんとなく前屈の動きを強調してみようと思い、あお向けのまま、膝を曲げて胸のほうに近づけてみました。
膝かかえ操法です。
(やすらぎの杜整体院オリジナル操法です(^.^))
(患者さんによって、ただ膝を抱えて味わう場合と、脚を戻すようにしてそれに抵抗をかけて味わう場合があります。仙骨の下にタオルを入れることもあります。)

当院の操体法では患者さんの気持ちよさをあれこれ探しているうちに、操体法の本や講習会などで教わったことも見たこともない操法が誕生することがあります。
教科書が正しいのではなく、患者さんが気持ちよい動きこそが正解なのです。

前屈がいいじゃないかという予想は当たり、腰が伸びてきもちがいいとのこと。
本人にも手で膝を抱えるようにしてもらい、そこに補助的に軽く押していました。このときは、抵抗なしです。

この膝抱え操法がぎっくり腰の患者さんに有効なケースが非常に多いんです。
ただ完全に力を抜いた状態でやらないと、ちょっとでも患者さんが力むと、特に重症のぎっくりは痛みますから、そ~っとゆっくり行ないます。
これは数十秒やりました。
すると、あおむけで脚を伸ばしても痛くなくなりました。

操体法 ひざたおし操法

もう一度膝倒しの動診をすると、右に倒すのが痛くなくなりました。
左は痛いままです。(ひねり右○ 左×)
そこで右膝倒しをゆっくり気持ちよい角度を探したらありました。

味わったあとに、左にも膝倒しをすると、さっきより痛みが少なくなりました。
(ひねり右○ 左△)
3つの軸を考えると、側屈系をやってなかったので、一応かかと伸ばしも。
右がよいので、右だけ味わいます。

左もやりたいというので、左をやったら何でもなかったのでやめました。
(側屈 右○ 左-)
とにかく気持ちよいこと以外はしません。

三軸操体法

再び膝倒しの動診。
まだ、左に倒すとちょっと痛みがあります。
とりあえず、3つの軸の動きはそれぞれやったので、最後にまとめて三軸応用膝倒し操法です。

右膝倒し+左肩下げ+後屈で、「気持ちいい!」

このときは、左前腕に抵抗をかけました。抵抗は気持ちよければ、どこにかけてもいいと思います。
左膝倒しの痛みもなくなりました。(ひねり左右○)

操体法は気持ちよいこと以外しない

「楽な姿勢を探し、気持ちよい動きをする」の繰り返しで、一つの動作ごとに、さっきは痛かった動きがどんどんできるようになりました。
本人も、楽なほうに、気持ちよく動いただけなのに、どんどん変化するので不思議がっていました。
最後に起き上がる際にも、スッと起きれました。

ぎっくり腰は基本的にはほっとけば治ることが多いですが、患者さんは少しでも早く仕事などに復帰したくて来院されますから、本人も納得できる形で痛みが改善できると嬉しいです。
だいたい良い結果が出せるときは、たいしたことはやっていません。

嫌なことはしない。ちょっとでも楽な姿勢を探す。
気持ちよいことをする。
あとは、体にまかせる。という感じです。

この人の場合は、どんどん動けるようになりましたが、動きたくない人は動かしません。あくまでも本人の感覚を優先させます。

一つの操法をゆっくり丁寧にやることを意識すると、一つの動きで、体がガラっと変化するのが実感できるようになります。

操体法と操法の順番

操体法にはいろいろな操法がありますが、どの時点でどの姿勢でどの操法を選択するのか、という順番が非常に大切な要素になります。

操体法では不快な動作などは一切しませんから、症状が悪化するということはほとんどありませんが、快適な動作が見つからない場合には、すこしでも楽な姿勢から始めることで快適な刺激が見つかりやすくなります。
快適感を味わうことにより、通常何かしらのよい変化が現れます。

快適な動作が見つかればあとはそれをしっかり味わいます。
快適感覚さえ見つかれば、たいしたことをしなくてもあっけなく良くなってしまうことも多いのです。

(2006年12月)