手首の腱鞘炎で来院された患者さんの操体法症例をご紹介します。

Fさんが3年4ヶ月ぶりに来院しました。3年前に腰痛で通院していたことがあります。今回は手首痛でお悩みだそうです。

先月のある日から急に右手首が痛くなり、その後左手首も痛くなって整形外科に行くと腱鞘炎と診断されました。鎮痛剤を処方され、湿布を貼ってサポーターで保護していますが、一向に良くなる気配がありません。なかなか良くならないのでついには手術を薦められてしまったそうです。

手術を受ける前に出来ることをやってみようということで、3年前に通院していた当院を思い出して来院されたのでした。

腱鞘炎への操体法施術

まずはFさんの体の状態をチェックします。

右手首は軽く掌屈・背屈の動きをするだけでも痛みがありました。左手首は動かすだけでは痛みはありません。ベッドに手をついて体重をかけると痛みがあります。

痛いのは手首ですけど、手首以外にもいろいろチェックします。腕を挙上しようとすると、肩関節が途中で引っかかって上まで挙がりません。左右の腕ともそんな状態でした。姿勢も背中が丸くなって猫背になっています。

手首が痛いと、多くの治療法では手首の関節を何とかしようとしますけど、当院では手首は一番後回しにします。痛いところはできるだけそっとしておくのです。

骨盤の調整

操体法の施術は毎回パズルを解くかの如くです。

Fさんは肩関節の動きが悪く、骨盤もねじれた状態でしたので、まずは骨盤周辺から調整を行ないました。

まずは仰向けで膝たおし三軸操体です。これであっという間に骨盤のねじれが解消しました。ベッドに腰かけてもらって、腕を挙上してもらうと右腕も左腕もスイスイ挙がるようになりました。Fさんはびっくりです。目が点になっています(笑)

もう一度右手首を動かしてもらうと、さっきは自分で軽く動かすだけで痛かったのに、痛みがありません。Fさんはますます目が点です。骨盤のねじれが手首にまで影響するとは普通はわかりませんから、びっくりして当然です。

肘関節の調整

手首を動かしても痛みはなくなりましたけど、ベッドに手をついて体重をかけると、左右の手首ともまだ痛みはあります。

そこで今度は肘の関節の調整を行なうことにしました。骨盤の調整で、肩甲骨や肩関節の動きは正常になったので、だんだん患部に近づいて次は肘を調整してみます。

まずは右肘から。肘関節のやや前腕よりの部分で橈骨と尺骨のバランスを調整します。調整した状態で肘を押さえたままFさんにベッドに手をついて体重をかけてもらうと手首の痛みはありません。これで痛みが消えるのであれば肘周辺を調整すればよいということになります。

片手で橈骨・尺骨を締めるように押さえたまま、さらに反対の手で上腕骨をつかんで、上腕と前腕を少しねじります。前腕を回外したときに「気持ちがいい感じ」というのでそのまま十数秒間押さえておきました。

それから私は手を離して、Fさんに自分でベッドに手をついてもらうと、グッと体重をかけても手首の痛みは出なくなりました。左手も同様にして痛みが消失しました。

ここまで説明時間を省けばほんの数分の出来事です。先月から手首が痛くて整形外科で治療を受けても改善しなくて、手術を薦められていた腱鞘炎の痛みがほんの数分で消失してしまったのでした。

腱鞘炎まとめ

結局手首には触れもせずに痛みが消失してしまいました。

調整したのは骨盤や脊柱のねじれと、上腕骨・橈骨・尺骨のバランスです。

今回のFさんのケースは、手首に何か衝撃を与えて痛くなったわけではないので、手首そのものの問題ではなく、全身の骨格バランスの歪みの結果として手首に負担がかかっていたのでした。だから原因は手首にあったわけじゃないので、手首には触れなくても痛みが解消したのでした。

全身はお互いにいろいろと繋がりあって協力しあいながら動いたりしています。だから痛いところだけ見るのではなくて、全身のつながりを考慮して調整する必要があるのです。

かといってもむやみに全身をマッサージしたり、決められた手順で全身の調整をすればよいというわけでもありません。その人にとって必要な刺激を必要な量だけ味わうことが大切なのです。

(2011年8月)