頭痛でお悩みのクライアントさん(20代女性)の操体法臨床例です。

操体法では症状に対して施術をしません。症状はいったん脇に置いて、身体との対話をしていきます。

自分の身体が何を表現したがっているのか、と言われてもわからない人がほとんどですから、その対話のお手伝いをさせて頂くのが操体法なのです。

整体施術を受ける姿勢

今日は頭痛があり、座位で検査をすると右肩だけ途中で引っかかってうまく挙がりません。左腕は同じように検査をするとスイスイ挙がります。

「今日はどんな体勢が楽ですか?」と尋ねるとうつ伏せが良いと言うのでうつ伏せになってもらいました。

最初にどんな体勢から施術をスタートするか、ということも大事なポイントです。

身体の状態を確認せずにとりあえずうつ伏せでマッサージをされる治療院も多いですけど、その時点で回復を遅らせてしまう可能性もあります。

腹臥位膝伸ばし操法

うつ伏せが楽だということでまずはうつ伏せになってもらいます。

膝を曲げる検査をすると、左膝を曲げるのがきついということで、左膝を伸ばす操法を行いました。

操体法のポイントは、単にその動作を行うだけでなく、その時の感覚を丁寧に確かめながらより快適な感覚を伴う動きを表現してもらいます。

操者の声掛けのタイミングや手を添える力やベクトル、クライアントさんとの力のつり合い加減など、熟練を要します。

単なる体操やエクササイズとは違うところです。受け手によって身体が表現したいことは異なりますから、同じ操法をやってもまったく違う動きになるということは良くあります。

左膝を伸ばす操法を一回行って、再び座って右肩の検査をしたところ、左肩と同じようにスイスイ上がるようになりました。左足にアプローチして右肩が良くなったのです。

腹臥位股関節ワイパー操法

続いて再びうつ伏せになってもらいます。

「私いつも寝るときうつ伏せで寝るんです。」とのこと。顔は左向きだったので、試しに右を向いてもらうと首がきつい。

首が捻じれているんですね。

そこで、当院オリジナルのうつ伏せでの股関節ワイパー操法を行いました。

これは私は足首辺りに触れていますが、股関節を中心に背骨から頸部にかけて動きのテンションを伝えていきます。とても上手に動いて気持ちよさそうです。実際に気持ちも良いのです。

気持ち良さを十分に味わってもらってから、また通常のうつ伏せに戻って顔を右に向けてもらうと「きついのがなくなった!」とのことです。

この操法も足から動いて首が良くなりました。

歯ぎしりへの対応

次に仰向けになりました。この時点では仰向けも楽です。

「最近歯ぎしりがひどい」というので顎関節の動きをチェックしましたが、特に悪くはありません。顎関節周辺の筋肉を触診すると右の咬筋に痛みがあります。

仰向けのままで肩関節の外旋検査をすると右肩がひっかかります。

右側に何かしら不調がありそうです。ふと直観で耳の操法を試したくなったので、右耳を引っ張ってみました。

クライアントさんに聞きながら気持ち良い強さで気持ち良い方向に右耳のみ一分ほど引っ張ります。

「実験だからね~」「これで肩が良くなるかわかんないけどね」などと言いながらやりました。その結果、右肩の外旋動作が改善しました。しかし、まだ左ほど良くはありません。

耳ひっぱり操法が気持ち良いということで、続いて両耳を気持ち良くひっぱります。

とても気持ちが良いようです。

耳ひっぱり操法と自発動

耳の気持ち良さを味わいながら、もっと気持ち良くなるように首もつり合い取りながら微調整して動いてもらいます。すると首も少しずつ動きが出てきました。

右手がモジモジと動き出そうしているので、「右手も動きたいように動いていいですよ」と声をかけると右手全体がゆっくり動いてきました。

続いて左の足も動いてきて体全体も捻じれるような動きが出てきて、全身が気持ち良いとのことです。

私はただ耳を気持ち良く軽くひっぱっているだけ。このクライアントさんも自分で考えて動いているわけではありません。身体が勝手に動きだすのです。

私がやっているわけでもなく、この方が自分で動いているわけでもなく、「じゃあ誰がこの動きをやってるんだろうねぇ?」と聞くと「誰なんでしょうねぇ。不思議ですね~。」と笑っています。

このような動きは身体の内なる叡智がやってくれているのです。

多次元操体法は内なる叡智と繋がるお手伝いをしているのです。

頭痛も楽になって、右肩の外旋動作もすっかり良くなりました。歯ぎしりのことは途中からすっかり忘れてたし、その場では確かめようがないのでまあいいでしょう。

治さない整体

結局この方は頭痛も楽になって帰られたのですが、私はこの方の頭痛を治そうということは何もしてないのです。

身体を動かしたり、触診した中で、次々に思いついたことを試してみただけです。何となくふと降りてきた直観に従います。クライアントさんと一緒に実験するような気持ちで楽しみながらやると良い感じになります。

決められた手順に従って施術をした方が楽ですし、ある程度の結果が望めます。

しかし、「神の領域」の調整には到達できません。どんなに達人の先生の治療を受けたとしても所詮人の考えに従ってやったことは「神の領域」には叶いません。

今回のような施術は神の領域の整体だと思っています。私はほとんど何もしていない。患者さんも自分では何もしていない。ただただ気持ち良さに身を委ねていただけです。

施術は身体の知性(内なる叡智)がやってくれたのです。

このような施術が可能になるのは、私の技術だけでなく、クライアントさんの謙虚な気持ち、素直な感性も必要です。「治してあげる・治してもらう」という関係ではないのです。

「治してあげる・治してもらう」という関係を超えて、私とクライアントさんが一緒になってクライアントさんの身体の細胞の声に耳を澄ました結果としてこのような施術が自然と行われたのです。

「操体はホドコシにあらずハカライなり」

師匠の言葉を胸に精進致します。

(2014年11月)