むち打ち・頚椎捻挫による首の痛みで来院された患者さんの操体法症例をご紹介します。

自動車事故で首がむち打ちになり、整形外科では「頚椎捻挫」と診断された患者さんが来院しました。当院に来院したのは事故後6日目です。

症状としては、首が痛くて顔を右に向けられない、上を見上げられない、右腕が挙げられないなどの症状がありました。操体法の施術の様子を紹介しましょう。

むち打ちの操体法施術 問診・検査

実はこの日はこの方のお母様の予約が入っていたのですが、娘さん(Yさん)も一緒に来院して、「娘が事故に遭って首が痛いって言うので今日は私の代わりにみて貰えますか?」というので急遽娘さんの施術になったのでした。

事故に遭ったのは6日前。自動車で走行中に狸が飛び出してきたのでよけたら、縁石に乗り上げ、そのまま道路脇雪よけの壁だかに激突したんだそうです。自損事故です。

どんな風な体勢でひねったのかぶつけたのか尋ねましたが、「自分でもどうなって痛めたのかわからない」と言います。ぶつけた方向とかわかると施術のヒントが得られるのですが、わからなくてもわからないなりに何とかやってみましょう。

検査をしてみると、先ほど書いたように、頚椎右回旋と伸展時に痛みが出ます。背骨も歪んで右肩を外転すると途中で痛くてひっかかります。

Yさんは、以前にもお母さんと一緒に来院して、操体法の施術を受けたことがあります。とてもセンスも動きもいい感じの人でしたから、今日もうまくいけばよいなぁと思いました。さて早速施術スタートです。

股関節の調整

例によって当院の整体施術では痛い患部への施術はできるだけ後回しにします。まずは全身のバランスを整え、必要があれば患部も調整します。

Yさんに仰向けになってもらうと、股関節がねじれた状態になっていました。首をねじると痛いわけですが、股関節や骨盤のねじれがあると首にも影響がありますので、まずは土台となる股関節や骨盤から調整することにしました。

仰向けのまま、私はYさんの足に手を軽く添えて、股関節が動きたがっている方向へと全身を使って優しく動いてもらいました。この場合の動きたがっている方向とは、歪んでいる方向を指します。

「歪み」っていうと一般的には何だか悪いイメージがありますけど、私は体がそちらに行きたがっている表れの1つと考えています。

だからもっと歪むような方向に動かしてあげると体はとても喜びます。そしてその証拠にとても心地よい感覚が湧いてきます。

Yさんに確認すると「気持ちよい」と言います。この辺の動き方などは映像で見てもらうことができればいいのですが、言葉で表現するのは難しいですね。そして、その気持ちよさを味わうと不思議なことに歪みも解消もしくは改善するのです。

私は足首付近に手を添えていますが、Yさんは足首、膝、股関節、骨盤を抜けて脊柱と、上半身のほうまで緩やかにふわーっと動いていきます。動いて、と書きましたが、傍から見たらたいして動いてもいません。私の手には、体の内部の動きがじわーっと伝わってきます。とてもいい感じで動けているのが伝わってきます。

調和に向かって変化している感じが私の手にも伝わってきましたので、きっと首も楽になるような直観が得られました。

再検査

Yさんの気持ちよさが薄れたところで、一度起き上がってもらってベッドに腰掛ました。再度頚椎の可動域を検査します。

先ほどと同じように顔を右に振り向いてもらうと「あーっ!痛くないです!!!」と、あっけなく痛みが取れてしまったのでした。肩の外転動作もすっかり問題なくスイスイ腕が上がるようになりました。

上を見上げると、先ほどよりもかなり動けましたが、まだ若干痛みが残っています。そこで、今度は上を向きやすいように施術をしてみることにしました。

筋膜調整

操体法のオーソドックスな手法としては、痛いのと反対方向に動かします。顔を上を見上げる(頚椎伸展)のが痛いわけですから、反対に下を見るようにしてもらいます。これは痛みもなく大丈夫です。

下を向いてもらって、さらに、頚椎下部から胸椎上部付近の筋膜をじわーっとリリースします。そうしたら「気持ちいいです」というので、そのまま味わってもらいました。

それから再度上を見上げてもらうと「痛みなくなりました!!!」ということで、ここまで5分少々。
あっけなく痛みが取れてしまったのでした。他に調子が悪いところを聞いてみても「すっかりいい感じです♪」ということで施術を終了しました。

ムチ打ち(頚椎捻挫)まとめ

病院で頚椎捻挫(通称ムチウチ)と診断された患者さん。一般的には、まずは整形外科の治療を受けたり交通事故治療に対応している整骨院などで治療を受ける方が多いですね。

今回のYさんのように、首を痛めてから早い時期に来院される人は非常に少ないです。整形外科や整骨院で保険治療を継続しても思うように改善しなかったり、後遺症に悩まされたりして来院される患者さんは時々いらっしゃいます。

交通事故じゃなくても、自転車で転んだとか、ひどく寝違えて首がまったく回らないという急性期の患者さんは時々来院します。当院では急性期でも、慢性期でもそれなりに対応可能ですが、実費の整体院なので保険適用にならないのでごめんなさいね。

Yさんの場合は、その場で痛みがすっかり取れちゃいましたけど、皆が皆、その場ですっかり痛みが取れるわけではありません。しかし、ほとんどの方がその場で何らかの可動域改善は見られます。可動域が広がると言うことは、緊張が緩和してよりリラックスしてより回復しやすい状況になるわけです。

実際、その場で痛みが取れない場合でも、可動性が改善していれば、回復のスピードが全然違います。逆の言い方をすれば、体が歪んで緊張している状態にあると、患部の治療を受けてもなかなか改善しにくかったりします。

それにしてもYさん、股関節のねじれが取れたら、首もあっけなくクルクル動けるようになり、痛みがすっかり取れちゃったのには私もびっくりしたのでした。私が治したのではありませんよ。Yさんの自然治癒力の働きによって良くなったのです。

(2011年10月)