操体法における「静と動」すなわち「陰と陽」に関する考察です。

今から5年半ほど前、2007年4月に書いたブログ記事を転載します。自分でもなかなかいいことを書いたなぁと思ったのですが、ブログだと過去記事に埋もれてしまってもったいないのでこちらにも転載しておきます。

操体法の動と静(陰陽のバランス)

操体法を毎日のように行なっていて最近気付いたことがあります。そのことについて今日は書きたいと思います。

ちょっとしたことに気付いたのですが、自分としてはすごい大発見をしたような気持ちになって、興奮して夜も眠れなくなりました(笑)

操体法の本を読むと、操体法のやり方について書いてあります。一般向けの本もたくさん出版されています。
でもやはり実際に体験してみないと、操体法の気持ちよさということが理解できなかったりします。

開業初年度にご縁があり、操体法創始者・橋本敬三先生の最後の直弟子である今昭宏先生と出会うことができました。

今先生の操体法は、橋本先生が本を多数出版した後に到達した領域を伝えています。そして今先生は現在でもさらにそれを進化させ続けています。

本を読んでもわからない世界。一般に操体法として全国に広まっているものをはるかに進化させた世界を伝えています。
そんな今先生と出会って初めて、操体法はこんなにも気持ちの良いものなのだったのだということを体験することができました。

以来、現在まで一度も休むことなく、今先生の操体講習会に参加させていただいています。

そして、少しでも達人の域に近づけるように、技術を高めるべく訓練してきました。

手の触れ方、コリの触診、声のかけ方、誘導の力加減、間の取り方、効果的な操法の選び方、操法を行なう順番、患者さんとの信頼関係づくり、治癒が起きやすい場づくり、、、、

最初のうちは技術を追い求め、それから技術以外の部分を追究してきて、そんな中で、時々、患者さん本人も私もびっくりするような治癒体験が起きるようになりました。

なぜだかわからないけれど、直接施術をしていないところや、口にもしていなかった症状が急激に改善したり、思いもよらなかった効果が出るようになったりしました。

自然治癒力の叡智はすごいなーと感動するようなことも多々ありました。

それらの治癒の体験は患者さん自身の力により起こったものであり、決して私が治したわけではありません。
なぜなら、私は本当にちょっとしたことしかしないからです。治る力を引き出す「お手伝い」というには申し訳ないくらいほとんど何もしないこともあります。

しかし、劇的な治癒の体験をした患者さんへの施術を思い起こしてみると、そんなほとんど何もしないに近い施術のケースが圧倒的に多いことに気がついたのです。

何もしないといっても、実際には操体の操法をいくつかするのですが、何でそんなちょっとしたことで良くなるの?と首を傾げてしまうような刺激で劇的治癒が起こったりします。

操法の数もせいぜい1~2種類。それをじっくりと味わってもらいます。劇的治癒が起こるときほど、操法の種類は少なく、そのかわりそれを味わう時間は長いです。

そんなことを思い起こしているときに、はっ!としました。

何もしていない時間にこそ何かが起こっているのではないか?

操体法は「動き」の面が注目されてますが、動きをやめたあとの、まどろみというか余韻の時間も大切にすることで、効果が倍増するかもしれない、ということを思いついたのです。

操体法の「動」と「静」をしっかり味わうことで、ひとつの操法が完結するのではないか。

陰と陽のバランス。
書道で言えば、筆の文字と、余白との関係。
数学で言えば、実数と虚数。
般若心経で言えば、色と空・・・???

なんかすごいことを発見してしまったようで、勝手に興奮してしまったのでした。
もちろんそのことに気付く以前も、操体の動きを味わった後の余韻の間も大切にしていました。

しかし、それは単なる時間的な「間」でした。

動と静をしっかり味わって初めて一つの操法が完結する。
そしてそれができたときに、その操法の効果が最大限に発揮されるのではないかということに気付いたのです。(自分なりの仮説ですが)

(2007年4月27日)

たわめの間と余韻の間

操体操法におけるじわ~っと気持ち良さを味わう時間を「たわめの間」と言います。「たわめ」とは枝が「たわむ」などのたわめです。

そこから脱力した後の余韻もとても気持ちがいいものです。これを「余韻の間」と名付けました。たわめの間と余韻の間。それぞれじっくり丁寧に味わいます。

自分で試してみると、余韻の間もしっかり味わうと非常に深くリラックスしていきます。そのまま眠ってしまいたいようなまどろみのような状態になります。瞑想している時の感覚とも似ています。

クライアントさんにも試してみると、余韻の間もしっかり味わってもらうようにすると、より深くリラックスして、施術効果も高まるように思います。

クライアントさんが自宅でセルフケアを行うときに、余韻も丁寧に味わうようにアドバイスすると、より操法の効果も高まり、精神的な充足度も高まります。

陰陽を超えて訪れるもの

「たわめの間」を動、「余韻の間」を静としましたが、操体操法の味わい方が深まると、どこまでがたわめの間で、どこからが余韻の間かわからなくなります。

動きが静まったかと思うと、さらに内側から動きが生じます。そしてそれを静かに味わいます。陰が転じて陽となり、陽が転じて陰になります。

動きの波が繰り返しやってくるけれど、深い静寂を感じます。ほとんど動きはないけれど、体の奥深くでは何かが蠢いて(うごめいて)いる。

とても深い安心感と心地よさに包まれて、ただただ、ありがたい気持ちになります。

そんな状態が訪れます。とても不思議な現象です。誰でもいつでもそうなれるわけではありません。感覚を磨き、味わいを深めていくうちにそのような境地が訪れます。

(2012年10月)