皮膚の操体法は、皮膚に軽く手を触れて動かすだけで心と体が変化する新感覚のバランス調整法です。
皮膚に問いかける操体法、「皮膚の操体(皮膚操法)」について解説します。

操体法(基本操法)の弱点

一般に知られる操体法は、気持ちよさを感じる方向へ体を動かすことにより、体の歪みを整えバランスをとり症状を改善していく方法です。

ところが、重症の患者さんの場合、どう動いても痛い、つらいという人がいます。
どの方向に動かしても気持ちよくないのです。そういった場合、基本的な操法(操体で使う動き)が使えないのです。

このような場合は無理に動くとかえって体のバランスが歪んだり、壊れたりしてしまいます。

皮膚の操体法の長所

操体法 首の皮膚

痛みがひどくて動けない患者さんがいます。どう動いても痛いのです。
こういう人の体は「動かない」ことを要求しているとも言えます。

筋肉や骨格へのアプローチでは、快適感覚(気持ちよさ)が見つからない場合は、皮膚を通して気持ちよさを体に聴きわけていきます。

皮膚に対して、直接または服の上からやさしく触れ、様々な方向に皮膚をずらしてみます。
そうすると気持ちよさが見つかることがあります。
気持ちよさが感じられる方向が見つかったら、皮膚をずらしたまま、気持ちよさがなくなるまで味わいます。

触れる皮膚の部位は患部の場合もあれば、患部とは離れた部位の場合もあります。
患部にはまったく触れていないのに、患部の症状が改善することも珍しくありません。

操体法と快適感覚(気持ちよさ)

操体法 足の皮膚

操体法では、体を動かして体の感覚を聴きわけていくことを「動診」といいます。
基本的に体のバランスが正常であれば動診をしてみても、気持ちよさもないし、痛みやつらさもありません。

動診をしてみて、痛みや不快な感覚があるときはバランスに異常があるといえます。
異常部位がよけいにバランスをくずされるので体は不快な感覚を通じて、「そっちには動かさないでちょうだい」と訴えているのです。

動診をしてみて、気持ちよいというときも、実は体のバランスに異常があるのです。
異常部位が本来の状態に修正されるので、快適感覚(気持ちよさ)があるのです。
「そのように動かすと治りますよ」という体の声なのです。

動診で気持ちよさが見つからない場合でも、皮膚を動かして気持ちよさがあれば、それが体にとって必要とされている刺激なのです。

操体法と体の歪み

操体法 後頭骨

整体でもカイロプラクティックでも、一般的には体の歪みを悪いものとして考えます。
悪いものを壊して正常にしていくわけです。

操体法では、必ずしも歪みを悪いものとは決め付けません。
どんなにつらい状態にあったとしても、体が一生懸命頑張って、なんとかバランスを保とうと努力した結果が、そのつらい状態なのです。

こりや痛みがあちこちに存在するかもしれません。
体がバランスをとろうと頑張っている結果が、そのこりや痛みなどの不快症状なのです。

操体法 肘

もしかしたら、それらのこりや痛みがなかったとしたら、体はもっと悪い状態になっていたかもしれません。
今まで頑張ってバランスをとってくれていたのだ、と見方を少し変えてみるだけで、体に変化が起こります。

自分の体に対して、「頑張ってくれてありがとう」「つらいのに支えてくれてご苦労さま」という気持ちが持てるようになると、意識もエネルギーですから細胞が変化します。

どうやったら楽になるかということは、実は頭で分からなくても体自体が知っているものです。
どうすれば楽になるのか、体の感覚を聴きわけていくことが操体法のアプローチなのです。

操体法 自発動の発生

操体法 手首連動

皮膚の操体を行なっている最中に、患者さんの体が本人の意思と無関係に、自動的に動きだすことがあります。

手足がぴくぴく動いたり、ゆっくりと円運動や往復運動を始めたり、震えだしたりと、様々なパターンがあります。

たいていの場合、自発動の最中にも気持ちよさが続いています。
気持ちよさが薄れるにしたがって、自発動もおさまります。

気功の自発動功や野口整体の活元運動も、操体法の自発動と同様のものだと考えています。

操体法 全身への連動

操体法 足首連動

皮膚に触れている部位だけでなく、全身が一連の動きとなって動く場合があります。
例えば、腕の皮膚に触っていて、手が動き出し、その動きが肩や背中に伝わり、腰に伝わり、足のほうまで動くこともあります。

このような場合は、気持ちよさは全身に及びます。
全身で体のバランスが改善していく気持ちよさを味わうことが出来ます。

全身が一体になってに安らかなリズムを奏でるような非常に美しい動きです。
また、そのような動きや体勢は、自分で頭で考えてやろうと思ってもなかなか再現できにくい動きである場合が多いです。

「全身全自動ストレッチ」という感じで、見ている私自身も非常に気持ちよい動きです。

自発動の意味

自発動は誰にでも毎回必ず起こるというものではありません。
体の感覚のききわけが鋭い方に起こりやすいような気がします。

自発動が始まると、少しびっくりしたり不思議な気持ちになったりしますが、安心して動きに身を任せて大丈夫です。
自発動は患者さん本人の体が無意識の部分でバランスをとろうとしている動きなのです。

体が動きたい感覚に逆らわずに従っていると、自動操縦のように体が自然に動いて、一番いいようにバランスをとってくれます。
自然治癒力の偉大さを感じます。

自発動操体による身体の変化

自発動や全身連動がおさまったあとは、皆さん体が非常にすっきりと楽になられています。

自発動の最中は、私はどうしているかというと、患者さんの皮膚に軽く触れているか、その部分の皮膚を軽くある方向にずらしていることが多いです。
患者さんの動きに一緒に寄り添ってサポートします。

患者さん本人が納得がいくまで充分に気持ちよさを味わってもらいます。
動きがおさまったら、体に残っている余韻も味わってもらいます。
軽い疲労感を覚える場合もあります。

治療とか施術という言葉が当てはまらない不思議な現象です。
患者さんの体の声に従って、自然に自分で治っていくという感じです。

自発動操体による精神の変化

自発動操体のあとに、気持ちの面で変化がみられる場合もあります。

「心までスッキリした。」「晴れ晴れとした気持ちになった。」「雲の上に浮いていたみたいですごく良い気分だった。」「すごくリラックスした。」などの言葉をいただいています。

自律神経のバランスが、副交感神経優位に傾きますので、心と体が深い休息モードになります。

操体法 体は治りたがっている

操体法、皮膚の操体の効果や受けているときの感覚、自動運動の発生の有無には個人差があります。
患者さん自身の体の気持ちよさを聴きわける感覚(原始感覚)が鋭い人と、そうでない人がいます。

また同じ患者さんでも、その日の状態・症状などにより感覚の違いがあります。
前回気持ちよさがあった動きが、気持ちよくなくなっていたり、その逆もあります。
また、一つの操法を行なうごとに感覚は変化します。
異常なバランスが正常に近づくにつれ、気持ちよさもなくなってきます。

操体法や、皮膚の操体を行ない、患者さんが自分自身の体の声に従って、症状が改善されていくのを近くで見ていると、体は治りたがっているのだなぁということを感じます。
心身の健康のバランスを取り戻す力が、どんな人にもきちんと存在するのだと実感します。