肩関節の痛みで整形外科を受診して「肩に石灰が溜まっている」「肩関節が石灰化している」等と言われる方がいらっしゃいます。
石灰沈着性腱板炎という病気です。
このページで一般的な治療法や当院で行なっている整体でのアプローチについて詳しく解説します。
目次
石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)とは?
まず腱板について解説します。
腱板とは?
腱板とは、腕を上げるときや内外に回すときなどに使われる筋肉群です。
棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つから成り立っています。
回旋筋腱板と呼ぶこともありますが、単に腱板と呼ばれることが多いです。
腱とは筋肉が骨に付着する白いスジっぽいところを指します。
腱板は腱が板状になっていることからそう呼ばれています。
症状
次に石灰沈着性腱板炎の症状について解説します。
中年以降の女性に多く見られます。
症状により5つのタイプに分けられます。
- 無症状
- 急性症状
- 亜急性症状
- 慢性症状
- 拘縮症状
1.無症状
画像検査で肩関節に石灰の沈着が見られてもまったく痛みがないケースもあります。
必ずしも痛みが出るわけではないのです。
2.急性症状
肩が激しく痛みます。
夜眠れないほど痛かったり、動かすと激しく痛みます。
もっとも多い症状です。
3.亜急性症状
無症状と急性症状を繰り返します。
4.慢性症状
肩を上げるときに痛かったり、動かしすぎた後に痛くなったりします。
症状は慢性的に継続します。
5.拘縮症状
関節が固まり動かしにくくなります。
原因
40~50歳代の女性に多くみられます。肩腱板内に沈着したリン酸カルシウム結晶によって急性の炎症が生じる事によって起こる肩の疼痛・運動制限です。
この石灰は、当初は濃厚なミルク状で、時がたつにつれ、練り歯磨き状、石膏(せっこう)状へと硬く変化していきます。石灰が、どんどんたまって膨らんでくると痛みが増してきます。そして、腱板から滑液包内に破れ出る時に激痛となります。
なぜ石灰が溜まるのかということについては、はっきりした原因はわかっていません。
五十肩(肩関節周囲炎)との違い
石灰沈着性腱板炎の症状は五十肩(肩関節周囲炎)ともよく似ています。
どちらも肩関節やその周辺に炎症が起こり痛みがあったり、可動域制限が見られます。
違いは画像検査により腱板に石灰の沈着が見られるかどうかで判別します。
石灰沈着性腱板炎の治療法
一般的な治療法と当院の考え方について解説します。
一般的な治療法
急性症状に対してはステロイド注射と消炎鎮痛剤の内服をします。
多くの場合2週間以内程度で症状が改善します。
慢性症状や拘縮症状の場合にも、ステロイド注射と消炎鎮痛剤の内服、およびリハビリが行なわれます。
一定期間を経ても効果が見られない場合には、手術により石灰を除去します。
当院の自然治癒力に対する考え方
石灰沈着性腱板炎は石灰が肩の腱板の周囲の組織に石灰が流れ込み炎症が起こると考えられています。
しかしなぜそのようなことが起こるのか、はっきりしたことはわかっていません。
体には自然治癒力があります。
体内で何かしらのトラブルが起こったときに、自発的に回復・治癒しようとする働きが備わっています。
石灰が腱板に流れ込む現象自体が自然治癒力によって生じていると考えています。
石灰を流し込むことで肩の腱板を保護しようとしたり、外部の刺激から守ろうとしているのではないかと考えています。
五十肩にしろ、腱板炎にしろ、肩の痛みには炎症が伴います。
一般的に炎症は悪いものであると考えられていますが、実は自然治癒力によって炎症が起こります。
炎症に対する考え方
炎症は体にとって修復工事と言えます。
炎症が起こることで患部は熱を持ち赤く腫れたりします。
血液を患部に集めることで修復工事を行なっているわけです。
道路工事をするときも騒音が出たり通行止めになったり何かと不都合が起こります。
体も修復工事を進めるために通常の行動を制限する必要があります。
そのために痛みが出たりだるくなったりして動きたくなくなるような仕組みになっています。
一般的に炎症が起きている場合には冷やすことが常識ですが、実は使い捨てカイロなどで温めると早く楽になる人が圧倒的に多いのです。
詳細は下記のページにまとめてあります。
石灰沈着性腱板炎の整体施術
当院の石灰沈着性腱板炎の施術の流れを紹介します。
検査
肩関節の可動域のチェックをします。
痛みを伴う検査はしません。
繊細にデリケートに動かして関節の動きをチェックします。
説明
現状と今後の方針について説明します。
肩関節の可動域制限には大きく分けて2つのパターンがあります。
- 肩関節自体が動かなくなっている
- 肩関節以外に原因があり肩関節の可動域が制限されている
2のケースの場合は、その場ですぐに肩の動きや痛みが大きく改善することもあります。
施術
実際の施術について解説します。
痛いことはしない
当院の施術は不快感を伴うことはしません。
不快感とは痛みや嫌な感覚を伴うことです。
当院で行なっている操体法では「気持ちよさを味わうこと」をとても大切にしています。
痛みを我慢しながら受けるような整体はしていません。
心地よい刺激、快適な刺激で施術を行っております。
患部以外のところも施術をする
西洋医学では痛いところに治療を行ないますが、当院では痛みの原因となる複数の要因に対してアプローチします。
患部以外のところに真の痛みの原因が潜んでいることがほとんどです。
肩の痛みや可動域制限が、下肢の調整で改善することは日常茶飯事です。
また構造面のバランス以外に、炎症が起こりやすい体質、炎症が治りにくい体質や生活パターンになっている場合には、根本的な生活改善も必要になります。
体の面だけでなく、食生活や思考パターンなども含めて、総合的に治癒促進のお手伝いをしています。
急性期と慢性期の対応
肩関節に激しい痛みを伴う場合には、直接肩に刺激を与えることは避けます。
炎症を早期に抑えるための対策をお伝えします。
栄養面の改善や温熱療法なども含めて、体の内部から修復するための方法をお伝えします。
炎症が治まっているけれど、可動域制限が見られる場合には積極的に患部周辺にも施術を行います。
動かせる範囲内で患部を動かす
「痛くても我慢して動かさないと関節が固まる」という考えがあります。
整形外科の医師やリハビリ担当の理学療法士にそのように言われた方もいらっしゃることでしょう。
そこで痛いのを無理して動かすリハビリやセルフケアを行なうわけですが、かえって逆効果になることもあります。
当院では、「動かさずにそっとしておくべき時期」と「積極的に動かす時期」と分けて考えています。
また積極的に動かす場合でも、絶対に無理なことはせず、快適に動かせる範囲内で動かしていきます。
整体で回復が望めるケースと難しいケース
石灰沈着性腱板炎は整体で改善できるケースと難しいケースがあります。
整体で改善が期待できるケース
- 肩関節以外の調整で肩関節の可動域が改善する場合
- 腱板への施術が快適に感じる場合
- 腱板への施術で痛みが緩和したり可動域が改善する場合
施術が気持ちよく感じられる場合は、体が調和に向けて変化しているサインです。
快適感覚が得られるか、可動域が少しでも改善する場合には施術を継続することをお薦めします。
整体で改善が難しいケース
- 夜も眠れないほどの激痛がある
- 拘縮症状が強く手術が必要な場合
夜も眠れないほどの激痛やじっとして動かさなくても耐えがたい痛みがあるときは、炎症が強い状態です。
そのような場合でも、基本的には温めると楽になることが多いです。
使い捨てカイロを当てたり、入浴で温めると楽になることも多いのですが、血流が増すことで痛みが強まることもあります。
あまり痛みが強いときや、とりあえず痛みを和らげたいという場合には医療機関で鎮痛のための治療を受けてください。
また拘縮症状が強い場合に整体では改善しにくいこともあります。
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