私たちの身体は、日々さまざまな刺激を受け取りながら生きています。

しかし、忙しい毎日の中で、自分の身体の声に気づかなくなってはいないでしょうか。

「なんとなく疲れが取れない」「不調があるのに原因がわからない」——

そうした悩みの背景には、“身体の感受性”の低下が関係していることがあります。

整体では、ただ筋肉や骨格を整えるだけでなく、本来誰もが持っている「感じる力=感受性」にもアプローチしていきます。

この感受性が目覚めると、体の微細な変化や内側からのサインに気づけるようになり、自然治癒力の働きも高まっていくのです。

この記事では、「身体の感受性とは何か?」という基本から、それを整体でどのように引き出していくのかまで、わかりやすくお伝えしていきます。

「身体の感受性」とは何か?

● 感受性=身体が“感じ取る力”

「感受性」という言葉を聞くと、多くの方は「感情の豊かさ」や「人の気持ちを察する力」など、精神的な側面を思い浮かべるかもしれません。

しかし、整体の視点で言う“感受性”とは、身体が自分自身の状態をどれだけ正確に、繊細に感じ取れているかという、身体的な「感覚の力」を指しています。

たとえば、

  • 背中が張ってきたときにすぐに気づける

  • 呼吸が浅くなっていることに自分で気づける

  • 食べ過ぎや冷えに体が反応しているのをキャッチできる

こうした「感じる力」が高いと、自分の体調や状態を早い段階で察知することができます。

それにより、休息をとったり、食事を調整したりと、自然に“ケア”ができるのです。

逆にこの感受性が鈍っていると、疲れや不調に気づかないまま無理を重ね、慢性的なトラブルへとつながってしまいます。

● 感覚は五感だけではない

私たちは、目で見たり、耳で聞いたり、皮膚で感じたりといった「五感」によって外界の情報を受け取っています。

しかし、身体の感受性にはそれだけでなく、**内側の感覚(内受容感覚)**も大きく関わっています。

  • 体性感覚(筋肉や関節の位置や動きに関する感覚)

  • 内臓感覚(呼吸の深さや心臓の鼓動、胃腸の動きなど)

  • 痛み・温度・圧力への反応

  • 空間認知・バランス感覚

これらの感覚がしっかり働いていると、自分の体が今どうなっているのかを細やかに把握することができます。

整体ではこうした感覚の回復をとても重視しており、「自分の身体に気づけるようになる」ことが施術の大きな目的のひとつです。

● 感受性が高い人・低い人の違い

感受性が高い人は、身体からのサインを敏感に受け取ることができるため、

  • 疲労の前兆を感じて早めに休める

  • 食べ物や環境との相性に気づける

  • 呼吸や心拍の変化に気づいて自律神経を整える

といったように、自然と自分に優しくなれる行動がとれるようになります。

一方、感受性が鈍っていると…

  • 痛みや違和感を無視して仕事や家事を続けてしまう

  • ストレスや緊張に気づかず、体に溜め込んでしまう

  • 「なんとなく不調」が続いても原因がわからない

といった悪循環に陥りがちです。

とくに、現代社会ではスマートフォンやパソコン、騒がしい情報環境によって五感や内側の感覚が過剰に刺激されたり、逆に麻痺していたりすることも少なくありません。

身体の感受性は、まるで“体内のセンサー”のようなものです。

このセンサーがしっかり働いていると、自分の体の状態を把握でき、自然治癒力や自己調整力を引き出すきっかけにもなります。

身体の感受性が鈍る原因とその影響

● なぜ身体の感受性は鈍ってしまうのか?

身体の感受性は、生まれつき備わっているものですが、日常生活の中で徐々に鈍っていくことがあります。

その主な原因は、現代の生活環境と習慣にあります。

1. ストレスの蓄積

ストレスは心だけでなく、体の感覚にも大きな影響を与えます。慢性的なストレス状態にあると、自律神経の働きが乱れ、呼吸が浅くなったり、筋肉が常に緊張したりといった状態が当たり前になります。

この「緊張が当たり前」の状態では、体からの微細な信号をキャッチする余裕がなくなってしまいます。

2. 過剰な情報と刺激

スマートフォンやパソコン、テレビなどから絶え間なく流れてくる情報によって、私たちの神経系は常に“外”へ向かっています。

そのため、自分の“内側”の感覚を感じる時間がほとんどなくなってしまいます。これが感受性の低下に拍車をかけているのです。

3. 無理を重ねる生活

「疲れているけど我慢して頑張る」「眠いけどもうひと仕事」「お腹が張ってるけど気にせず食べる」など、自分の体からの声を無視する習慣が続くと、次第に身体のセンサーは反応しなくなっていきます。

これも感受性が鈍っていく大きな原因の一つです。

● 感受性の低下がもたらす影響

感受性が鈍っていると、体からのサインを受け取れなくなり、次のような問題が起こりやすくなります。

1. 不調に気づけない

体調が悪化しているのに気づかずに過ごしてしまい、気づいた時には症状が深刻化していることがあります。

「気づいたらぎっくり腰」「いつの間にか慢性疲労」「呼吸が苦しいけど理由がわからない」など、予防ができず突然の不調に見舞われることが多くなります。

2. 自然治癒力が働きにくくなる

本来、体は小さな不調を自力で整える力(自然治癒力)を持っています。しかし感受性が鈍っていると、「どこをどう整えたらいいのか」が体内でわからなくなり、自然治癒力のスイッチが入りにくくなります。

3. 心の不調にもつながる

身体の感覚が鈍ると、心にも影響が出てきます。自分の気持ちに気づけなかったり、心身のつながりを感じられなくなったりすると、無気力や不安感、イライラなどの精神的な不調が起こりやすくなります。

● 「鈍っていることに気づいていない人」が多い

感受性の低下が厄介なのは、自覚しにくいことです。

「なんとなく疲れやすい」「いつも体が重い」「眠ってもスッキリしない」といった状態が“当たり前”になっていると、「これが普通だ」と思ってしまいがちです。

しかし、整体などで体を整え、感受性が回復しはじめると、皆さん口をそろえてこう言います。

「えっ、こんなに体って軽くなるんですね」

「呼吸が深く入るって、こういうことなんだ」

「今まで自分の体に無関心だったことに気づきました」

つまり、感受性を取り戻すことで、本来の自分の状態を思い出すことができるのです。

身体の感受性を高めるためにできること

● 「感じる習慣」を取り戻すことが第一歩

感受性は、特別な才能ではなく誰にでも備わっている力です。そして一度鈍ってしまった感受性も、意識と習慣によって取り戻すことができます。そのための第一歩は、「感じる時間」を日常に少しずつ取り戻すことです。

現代人は“考えること”に偏りすぎ、“感じること”を忘れてしまいがちです。整体の観点では、思考から感覚へ意識を切り替えることが、回復への大切な鍵になります。

● 身体に意識を向ける簡単な習慣

以下のような小さな習慣でも、感受性を育てる助けになります。

1. 朝起きたときに「今の身体」を感じてみる

布団の中で少し目を閉じて、体の重さ、温かさ、呼吸の深さ、肩や首のこわばりなどを感じてみましょう。評価や分析をするのではなく、ただ「今の自分の体ってこうなんだな」と受け取るだけで十分です。

2. 呼吸に意識を向ける時間をもつ

日中のスキマ時間に、1分でもいいので呼吸に意識を向けてみましょう。「浅いな」「詰まってる感じがするな」「右と左で吸いやすさが違うな」など、観察することが目的です。呼吸は感受性を取り戻すための“入口”です。

3. 食事中に「味わって食べる」

食事中にスマホやテレビを見ながら食べていませんか?感受性を高めたいなら、「今食べているものの香りや味、温度、噛む感触」などに意識を向けてみましょう。五感を使うことで、身体感覚が磨かれていきます。

● 整体で感受性が目覚める理由

当院をはじめとした整体では、身体に負担をかけず優しく働きかける施術を通して、身体の感受性を自然に呼び覚ましていきます。

  • 「あ、今、ここがゆるんだ気がする」

  • 「呼吸が通りやすくなった」

  • 「脚の裏が地面にぴったりついている感覚がある」

このような“自分の変化に気づく感覚”が呼び戻されると、自然治癒力が内側から動き出します。整体は、身体の歪みを整えるだけではなく、「感じる力」を回復させる大切なきっかけになるのです。

● 日常の“ゆるみ”が感受性を高める

感受性は、リラックスした状態のときに最も高まると言われています。

そのためにも、日々の生活に“ゆるみ”を取り入れることが大切です。

  • 深呼吸をする

  • 自然の中を散歩する

  • ゆっくりお風呂に浸かる

  • 無理に頑張りすぎない

  • 「疲れた」と思ったら素直に休む

こうした「緩む」ことを許せる人ほど、身体の声に気づきやすくなります。忙しい日々の中でも、自分の内側に立ち返る時間を少しでも確保していくことが、感受性を取り戻す近道です。