整体院では、来てくださる方を「患者さん」とは呼ばず、「クライアント様」や「お客様」とお呼びすることが一般的です。これは単なる言葉遣いの違いではなく、整体という分野が大切にしている考え方や立場の違いを表しています。
病院やクリニックなどの医療機関では、「患者」という言葉が自然に使われます。それは、医師が病気やケガに対して診断と治療を行うという、明確な医療行為が前提となっているからです。一方で、整体院は医療機関ではなく、身体の緊張やゆがみを整え、自然治癒力を引き出すサポートをする場所です。
整体では、来てくださる方を「病気の人」として捉えるのではなく、健康への意識を持ち、自ら整う力を育てようとされている存在として尊重しています。だからこそ、「患者さん」という表現よりも、「クライアント様」や「お客様」という呼び方を選んでいます。
この呼び方には、「お迎えする姿勢」や「対等な関係性」、そして「その人自身の力を信頼する」という私たち整体院の基本的な考え方が込められています。
この記事では、なぜ整体院では「患者さん」と呼ばず、「クライアント様」や「お客様」とお呼びするのか、その背景と想いについてお伝えしていきます。
「患者」という言葉が持つ意味と限界
◎ 医療における「患者」という定義
「患者」という言葉は、一般的に「病気やけがをして医療機関で治療を受ける人」を指します。病院やクリニックでは、医師が診断を行い、必要に応じて薬を処方したり、治療計画を立てたりする中で、「患者」という呼び方がごく自然に使われています。
この呼び名には、診療を提供する側と治療を受ける側という、明確な役割の違いが存在しています。つまり「治す人=医師」と「治してもらう人=患者」という構造のもとで成り立っている言葉なのです。
◎ 整体は医療機関ではない
一方、整体院は医療機関ではありません。整体師は医師ではないため、診断や投薬、外科的処置を行うことはありません。整体の主な目的は、骨格や筋肉のバランスを調整し、身体の不調の原因を探りながら、本来備わっている自然治癒力を引き出すサポートをすることにあります。
たとえば、肩こりや腰痛、慢性的な疲労など、病気とまではいえないけれど日常生活に支障をきたす不調に対して、整体は「体の使い方」や「姿勢」「緊張」などの観点からアプローチします。ここに医療的な診断や処置は介在しません。
したがって、整体の現場において「患者さん」という言葉を使うことは、施術者とクライアントの関係性や整体という分野の性質と一致しないと言えるのです。
◎ クライアントやお客様という表現がふさわしい理由
整体院に来られる方は、ご自身の体と心の声に耳を傾け、何かしらの不調や違和感を感じて、「今の自分を整えたい」「本来の元気な状態を取り戻したい」と思って足を運んでくださっています。その行動は、とても主体的で前向きなものです。
私たちは、そうした方々を対等な関係の中で敬意をもってお迎えしたいと考えています。「お客様」や「クライアント様」という呼び方には、「選んで来てくださった方」「共に歩む存在」という気持ちが込められています。
「クライアント」という言葉には、施術を受けるだけでなく、自らも癒しのプロセスに参加しているという意味も含まれており、整体という施術にとって非常に親和性の高い表現です。
また「お客様」という呼び方には、整体院が提供する空間やサービス、対応そのものに満足していただけるようにとの気持ちが込められています。リラックスして施術を受け、安心して心と体を預けられる場であるために、「お客様」という言葉も自然と選ばれています。
整体院での呼称が築くクライアントとの信頼関係
◎ 整体院が「クライアント様」「お客様」と呼ぶ理由と信頼の姿勢
整体院では、来院される方を「クライアント様」や「お客様」とお呼びしています。この呼び方は単なるマナーや言葉の形式ではなく、整体師としての信頼と誠実さを示す大切な姿勢です。整体の施術は身体だけでなく心も整えるため、来てくださる方が安心して体を預けられる環境づくりが不可欠です。
「患者さん」という言葉には、どうしても受け身で治療される立場という印象がありますが、整体ではクライアント様ご自身が健康改善の主体者です。つまり、整体師とクライアントは二人三脚で歩むパートナーであり、その関係性を言葉でも丁寧に表現しています。
このような信頼関係の構築は、整体の施術効果を高める上でも非常に重要です。安心感があると体も心もリラックスしやすくなり、自然治癒力がより引き出されやすくなるからです。
◎ 整体施術における対等なクライアントとの関係性の重要性
整体院では、クライアント様が主体的に自分の健康と向き合うことを尊重しています。医療機関のように「医師が治し、患者は受け身」という関係ではなく、整体師とクライアント様が協力しながら施術を進めていくという考え方です。
そのため、「クライアント様」や「お客様」という呼び方は、対等で尊重し合う関係性を示すものです。この呼称により、クライアント様は自分の体と向き合う意識が高まり、整体師に対しても信頼と安心を持って施術を受けられます。
また、言葉の選び方一つで来院される方の心の状態や施術の受け方が変わってくることは、多くの整体師が経験的に理解しています。敬意を込めた呼称は、施術者とクライアント様の良好なコミュニケーションを生み、施術の効果や満足度の向上にもつながるのです。
整体院の呼称がもたらすコミュニケーションの質向上
◎ 丁寧な表現で「クライアント様」「お客様」と呼ぶ理由
整体院では、ブログや案内文などの文章で「クライアント様」や「お客様」という丁寧な呼び方を使っています。これは、初めて整体を受ける方にも安心していただきたいという思いからです。敬意を込めた言葉遣いは、整体院として誠実で信頼できる場所であることをお伝えする大切な手段です。
こうした丁寧な呼称を用いることで、まだ来院されていない見込みのお客様も、安心してサービスを検討できる環境が整います。
◎ 口頭では名前を添えて「○○さん」と呼びかける理由
施術の際や対話の中では、直接お一人おひとりを「○○さん」と名前でお呼びしています。名前で呼ばれることは、初めての方でも親しみやすく感じられ、リラックスして整体を受けていただく助けとなります。施術中のコミュニケーションがスムーズになることで、体調の変化やご希望もお話しやすくなります。
◎ 複数の来院者を指す時は「お客さん」という言葉を使う
また、「他のお客様」という意味で複数の来院者を指す場合には、口頭で「お客さん」という表現を使います。これは、硬すぎず自然な言葉で場の雰囲気を和ませる役割を果たしています。
このように、呼び方をシーンに応じて使い分けることで、クライアント様との距離感を適切に保ちつつ、親しみやすさと丁寧さを両立させています。