気づけば、ずっと無理をしていた。

そんな風に感じたことはありませんか?

身体の痛みや不調が続いているのに、検査をしても異常は見つからない。

気持ちが晴れず、なんとなく息苦しい。

そんなとき、私たちはつい「どこかが悪いのかな」と身体だけに目を向けがちです。

けれど、整体の現場ではときどき、こんな言葉が聞こえてくるのです。

「本当は、こうしたかったんです」

「気づかないふりをして、ずっと我慢していました」

体が出しているサインの奥には、

“本当の自分”の声が、そっと隠れていることがあります。

整体は、ただ体を整える場所ではありません。

あなた自身の心と体の声に、静かに耳を澄ませる場所。

そして、忘れていた“本当の自分”に還るための、やさしい通り道なのです。

本当の自分とは何か

◇ 子どものころに感じていた純粋な想い

誰しも子どものころには、自然にわきあがる気持ちや素直な欲求がありました。

「これが好き」「やってみたい」「こうしたい」――そんな気持ちを、あまり深く考えることなく、そのまま表現していた記憶はありませんか?

たとえば、絵を描くのが好きだった子、動物と触れ合うのが楽しかった子、人と話すのがワクワクした子……。

何か特別な理由がなくても、「好きだからやりたい」「楽しいから夢中になれる」。

そんな純粋な感覚が、子どものころには当たり前のようにありました。

それこそが、本来の自分――“本当の自分”が持っていた自然なエネルギーなのです。

ところが、大人になるにつれて、私たちは少しずつその感覚を忘れていきます。

◇ 「こうありたい」「こう生きたい」という自然な欲求

本当の自分を生きるというのは、何か特別な才能を発揮したり、大きな夢を叶えるということだけを意味しているわけではありません。

それよりもむしろ、自分の内側にある小さな感情や違和感に気づきながら、丁寧に選択していくこと。

「本当はこうありたい」「こんなふうに過ごしたい」――そうした自然な欲求を大切にし、日々の中で少しずつ実現していくことが、“本当の自分を生きる”ということにつながっていきます。

たとえば、静かな時間が好きなのに、人に合わせて無理ににぎやかな場所に行き続けていたり。

誰かの期待に応えることを優先し、自分の気持ちを後回しにしていたり。

そんな日々が続くと、だんだんと心の中に違和感や疲れがたまってきます。

本当の自分は、日々の選択や行動の中で少しずつかき消されていくこともあるのです。

◇ “演じる自分”が強くなると、本音や本質は奥に押し込められる

社会の中で生きていくためには、ある程度の“役割”や“演じる自分”が必要です。

家庭では親として、職場では上司や部下として、友人の前では気を使える存在として――。

どの立場も大切なものですが、そこに“無理”が積み重なると、自分の本音をどこかに閉じ込めるようになってしまいます。

「こう言ったら嫌われるかもしれない」「こんなこと思ってはいけない」

そんな思いが積み重なると、自分でも本当の気持ちがわからなくなってしまうことがあります。

それでも心のどこかでは「これは自分らしくない」「もう頑張りたくない」と感じているのです。

その葛藤は、体の緊張や呼吸の浅さ、慢性的な疲れ、そして何となく気分が晴れないというような形で、

“症状”や“違和感”として表れてくることがあります。

つまり、身体はいつも、心の状態や“本当の自分”との距離感を映し出してくれているのです。

本当の自分を生きていないとき、身体はどうなるのか

私たちの心と体は、思っている以上に密接につながっています。

たとえ「私は元気」と口では言っていても、心の奥では無理をしていたり、本当の気持ちを押し込めていたりすると、その“ズレ”は必ず体に影響を及ぼします。

とくに、自分の本音や本来の在り方を押し殺して生活を続けていると、次第に身体はサインを送ってくるようになります。

それは最初、ほんの小さな違和感や疲れとして感じられるかもしれません。

◇ 無意識の緊張が、体をこわばらせる

「ちゃんとしなきゃ」「期待に応えなきゃ」

そんな思いを無意識に抱え続けていると、体はずっと軽い緊張状態を保ち続けます。

肩が上がり、首まわりが固くなり、背中が張ってくる。

本当はリラックスしたいのに、気が張って抜けないような状態が続いていきます。

その結果、肩こりや腰痛、頭痛、胃腸の不調など、はっきりとした症状として現れてくることもあります。

こうした体の不調は、外側から見ると「姿勢のクセ」や「疲れの蓄積」と片づけられてしまいがちですが、

内側には“自分の本音を我慢している”という深い背景が隠れていることもあるのです。

◇ 呼吸が浅くなると、感情も感じにくくなる

本当の気持ちを抑えて生きていると、呼吸も自然と浅くなっていきます。

呼吸が浅いと、自律神経のバランスも乱れやすくなり、気分の浮き沈みや不安感が強くなることがあります。

また、呼吸の浅さは“感じる力”の低下にもつながります。

嬉しい・悲しい・楽しいといった感情が鈍くなり、日常にときめきや充実感を感じにくくなるのです。

まるで心が閉じてしまっているような、そんな感覚に陥る方も少なくありません。

◇ 身体の声を無視し続けると、限界がやってくる

人は、意識していなくても体の声を感じ取っています。

でも、「まだ大丈夫」「私が我慢すればいい」とその声を無視し続けると、いつしか心身の限界を超えてしまうことも。

・なんとなく体が重い

・朝起きても疲れが抜けない

・感情の波が激しい

・理由もなくイライラする、不安になる

こうした状態は、「もうそろそろ、自分を見直してほしい」という体からのサインかもしれません。

整体で本当の自分に還っていく

心や体の不調が続いていると、「何とかしなくちゃ」と焦る気持ちが強くなりがちです。

けれども、整体の時間はその逆で、「何もしない」ことを大切にしています。

力を抜いて、ただ体の声に耳をすませる――。

そんな静かな時間が、忘れていた“本当の自分”を思い出すきっかけになるのです。

◇ 身体がゆるむと、心もゆるむ

整体の施術は、強く押したり、無理に整えたりするものではありません。

やさしく触れ、呼吸に合わせながら、ご本人の自然な感覚を引き出していくものです。

「気持ちいい」「心地よい」「力が抜ける」

そんな感覚を味わっていただくことで、まずは身体がゆるんできます。

すると、これまで張り詰めていた心も、少しずつ緩んでいくのです。

緊張が解けたときにこそ、ふと本音が浮かんでくる瞬間があります。

「そういえば、私こんなことがしたかったんだな」

「最近、本当の気持ちに気づいていなかったな」

そんな気づきが、自然とあらわれてくることもあるのです。

◇ 「こうでなければならない」からの解放

日々の生活の中で、私たちは知らず知らずのうちに「〜しなければならない」という思考に縛られがちです。

仕事の役割、家庭での責任、人からどう見られるか……

そういったことに意識を向けすぎると、自分の内側の声がどんどん遠くなってしまいます。

整体では、そうした“外からの圧”をいったん脇に置いて、

「今、体がどう感じているか」

「どこに余裕があって、どこが頑張っているのか」

を丁寧に見つめていきます。

体が整っていくと、不思議と心の中の「こうでなければ」という思い込みもゆるんでいきます。

そして、「私らしくいればいいんだ」と思える瞬間が訪れます。

◇ 自分の感覚を信じることから始まる

本当の自分に還るためには、特別なことをする必要はありません。

まずは、自分の体の感覚を信じること。

「これが心地いい」「これは嫌だ」「今はこうしたい」――

その小さな感覚を丁寧に拾っていくことが、第一歩です。

整体では、その“感覚の声”を拾うためのお手伝いをしています。

決められた形に整えるのではなく、その人の内側から自然に湧き上がってくる動きや呼吸に寄り添うことで、

本来持っている「自分らしさ」や「自然治癒力」が目を覚ましていきます。

本当の自分を生きると、健康と幸せがついてくる

私たちは本来、自分らしく生きることが自然であり、健やかであることと深くつながっています。

それなのに、日々の生活の中で無理を重ね、自分の本音を見ないふりをし続けてしまうと、

心も体も、どこかで悲鳴を上げはじめるのです。

◇ 自分を押し殺すことで、身体に現れるサイン

「本当はやりたくないことを、我慢してやっている」

「誰かに合わせすぎて、自分の気持ちがわからなくなった」

そんな毎日を続けていると、知らず知らずのうちに体も緊張し、

肩こりや頭痛、胃の不調、不眠といった形でサインを出し始めます。

体はとても正直です。

言葉ではごまかせても、体の感覚はごまかせません。

だからこそ、そのサインを無視せず、

「今、自分に何が起きているのか?」を見つめ直すことが、回復の第一歩になるのです。

◇ 「自分を生きる」とは、心と体の一致

“自分を生きる”というのは、

わがままに振る舞ったり、好きなことだけをするという意味ではありません。

本来の意味は、心と体の感覚が一致している状態、

つまり「自分の内側の声」と「外に見せている行動」がつながっているということです。

たとえば、疲れているときに「疲れた」と認めて休む。

無理に笑わず、「今は静かにしていたい」と選ぶ。

そうした些細な選択の積み重ねが、自分自身を大切に扱うということなのです。

その結果、心の緊張がほどけ、体の不調も少しずつ改善していきます。

そして、気づけば自然と「幸せだな」と感じられる瞬間が増えていくのです。

◇ 健康とは「自分に還っていくプロセス」

整体で目指しているのは、単に症状をとることではありません。

本来の自分に立ち返り、自分の感覚と丁寧につながっていくことで、

結果として自然治癒力が高まり、健やかでいられる心と体が整っていくのです。

それはまさに、“自分に還っていくプロセス”。

無理や我慢の積み重ねではなく、

「私はこう在りたい」という感覚に正直になることから、健康は始まります。