執筆者:院長 上川名 修

妊娠と栄養の関係

不妊症の解決法は複数ありますが、避けては通れない非常に大切なことが栄養面の改善です。
当院では不妊の改善のために分子栄養学に基づく栄養改善指導を行っています。

不妊症と栄養の関係

妊娠のためには子宝整体と併せて栄養面の改善も大切です。
このページでは妊活のための体質改善の食事法を紹介します。

子宝整体というのは、妊娠しやすい体質づくりのお手伝いです。
全身の歪みが改善され、特に骨盤周辺の緊張が取れると骨盤内臓器の働きも向上します。
それで本来持っている体の機能を取り戻すのです。

月に2回程度定期的に通院して頂きながら、体質改善のアドバイスも実行して頂きます。
すぐに赤ちゃんが授かる方と、そうでない方の違いとしては、身体の歪み以外に精神的なストレスや栄養面にも大きな違いがあります。

このページでは、妊活に必要な栄養について解説します。

母体の栄養が不足すると…

妊娠するとお腹の中の赤ちゃんはお母さんの体から栄養を取り込んで成長します。
ところが不妊で悩んでいる方は栄養が不足している方が多いのです。

母体の栄養が足りないと妊娠しにくいだけでなく、赤ちゃんが元気に成長しにくいということが起こります。
胎児の発育遅延や低体重児、早産などの危険性が高くなってしまいます。

母体に栄養が必要な理由としては以下の理由が挙げられます。

  • 性ホルモンの材料になる
  • 子宮環境を整える
  • 早産や流産を防ぐ

またお腹の中の赤ちゃんにとっても栄養は必要です。

  • 赤ちゃんの発育に必要
  • 低体重で産まれると障害が起こりやすい
  • 母乳から免疫抗体や栄養が得られる

以上のような理由で母体にとっても赤ちゃんにとっても、栄養をしっかり摂ることが必要であるということをご理解頂けたと思います。

卵子の老化

妊娠前から十分な栄養が必要なもう一つの理由として、卵子の老化の問題があります。

卵子はお母さんのお腹の中にいる時に一生分が作られます。
ピークは胎児期で700万個、出生時には100万個まで減少します。

さらに排卵が始まる第二次性徴期の頃には約40万個に減少します。
つまり年々卵子の数は減少し、卵子も年を取っていくのです。

栄養が不足している女性は卵子の質も低下してしまうのです。
しかし食事を見直し適切な栄養を摂ることで卵子のアンチエイジングが可能になるのです。

栄養療法(分子栄養学)の不妊解消への活用について

分子栄養学とは

分子栄養学は、私たちが食べるものの中の栄養素が体の中でどのように動いて、どのように体に影響を与えるかを科学的に研究する学問です。
この学問は、私たちの体の細胞や遺伝子のレベルで何が起こっているのかを詳しく調べます。
これにより、どの栄養素が健康に良い影響を与え、どの栄養素が問題を引き起こす可能性があるかがわかります。

不妊症改善のための活用

例えば、不妊症に悩む人々に対して、分子栄養学は特に効果的です。
不妊症の一因として、栄養不足や栄養の過剰摂取が考えられます。

栄養が不足していると、体のホルモンのバランスが崩れることがあり、これが生殖機能に影響を与えることがあります。
また、特定の栄養素を過剰に摂ることも、体の内部のシステムを狂わせ、妊娠のチャンスを低下させる可能性があります。

分子栄養学に基づいた食事指導を受けることで、子どもを望むカップルは自然に妊娠しやすくなるかもしれません。
このように、分子栄養学は私たちの日常生活において非常に役立つ学問であり、健康を維持し、病気を予防するための重要な知識を提供してくれます。

不妊症のための栄養療法(分子栄養学)

妊娠体質に変わる食事

不妊症を改善し妊娠するための具体的な食事法について紹介します。
当院では分子栄養学(分子整合栄養医学:オーソモレキュラー療法)に基づく栄養改善指導を行っています。

タンパク質をしっかり摂る

まず赤ちゃんの体の構成要素でもっとも大切となる基本がタンパク質です。
タンパク質は皮膚や筋肉、血管、内臓、骨、歯、爪や酵素やホルモンの原材料になります。

一日に必要なタンパク質の量は体重1㎏あたり1~1.5グラムと言われています。
特に妊娠中では1.5~2グラム必要です。

体重が50㎏の人の場合50~75グラム、妊娠中では75~100グラム必要になります。

ちなみに牛肉100グラムから摂取できるタンパク質は16グラムです。
かなりの量が必要であるということがわかると思います。

タンパク質は肉、魚、卵などで積極的に摂るようにしましょう。

鉄分をしっかり摂る

タンパク質についで重要な栄養素が鉄です。

鉄の主な働きは以下になります。

  • 赤血球を作る
  • 体内に酵素を運ぶ
  • 骨、皮膚、粘膜の代謝と関係する
  • コラーゲンの合成に関係する
  • 白血球、免疫に影響する
  • 知能、情動に影響する

粘膜を作る材料になりますので、子宮内の環境を整えるのに必要不可欠です。
また女性は月経により毎月一定量の鉄を失いますので男性より鉄が不足しがちになります。

ところで鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。
タンパク質と結合しているヘム鉄は吸収率が高いので非ヘム鉄よりも積極的に摂取すると良いでしょう。

ちなみにヘム鉄の吸収率は非ヘム鉄の約5~10倍も違います。
ヘム鉄は肉や魚、卵などの動物性食品に多く含まれていますので、積極的に摂るようにしましょう。

糖質の摂取を減らす

甘いものが好きだったり、パンや麺類やご飯の食事が多い場合に糖質が過剰になっていることがあります。
なぜ、糖質を摂り過ぎるとよくないのかというと、血糖値が不安定な状態になりやすいのです。

血糖値が不安定になるとホルモンバランスも乱れ、脳も栄養不足の状態になります。

空腹時に甘いものを食べると血糖値が急激に上がります。
すると血糖値を下げるためにインスリンが大量に分泌されます。

インスリンの過剰分泌は排卵障害の原因になったり、子宮内膜症の発症にも関係していると言われています。

亜鉛を摂る

妊娠中に亜鉛を適切に摂取することは非常に重要です。
亜鉛は、多くの生理的プロセスと細胞の成長に必要な栄養素であり、特に胎児の成長と発達において重要な役割を果たします。
以下に、妊娠中の亜鉛摂取の利点をいくつか挙げます。

  1. 胎児の成長と発達:亜鉛は細胞分裂とタンパク質合成に不可欠であり、これにより胎児の適切な成長がサポートされます。

  2. 免疫機能のサポート:亜鉛は免疫系の正常な機能に重要であり、妊娠中に適切な免疫機能を維持することは、感染症から母体を守るのに役立ちます。

  3. 出産後の回復:亜鉛は傷の治癒を助けるため、出産後の回復プロセスにおいても有益です。

亜鉛の不足は、低体重児の出生や先天性異常のリスク増加など、妊娠中の合併症に関連することがあります。
したがって、妊娠中は特に、亜鉛の適切な摂取が推奨されます。

ただし、亜鉛を過剰に摂取することは避けるべきであり、妊娠中の女性に推奨される亜鉛の摂取量は1日に約11-12ミリグラムです。亜鉛は、肉類、魚類、全粒穀物、豆類、ナッツ類などの食品に含まれていますが、必要に応じてサプリメントでの補給も検討できます。

ビタミンB群を摂る

エネルギー代謝と関係するビタミンB群が不足すると卵子もエネルギー不足になります。
またビタミンB群はすべての神経伝達物質の合成に関与していますから、欠乏すると睡眠障害、記憶力の低下、集中力の低下などの症状も起こりやすくなります。

また妊娠初期の段階で胎児に中枢神経系の発育に必要となります。
ですから日頃からビタミンB群はしっかり補給する必要があります。

ビタミンB群は複合的に作用しながら効果を発揮しますので、単品で摂るのではなく肉も野菜も一緒にバランス良くとる必要があります。

卵子の老化対策

次に卵子の老化予防のための栄養を紹介します。

ビタミンC

ビタミンCは活性酸素を除去したり、抗酸化作用の非常に高いビタミンです。
細胞が酸化して傷がつくと老化や病気の原因となります。

この酸化を引き起こす要因が活性酸素です。
ビタミンCはこの活性酸素を除去してくれる働きがあるのです。

ストレス、飲酒、喫煙、糖質の多い食事、激しい運動などは活性酸素を発生させます。
するとビタミンCもどんどん使われてしまいます。

妊活のためには活性酸素の発生を減らし、ビタミンCも積極的に摂って卵子の老化を遅らせる必要があるのです。

ビタミンE

ビタミンEは別名妊娠ビタミンとも呼ばれます。
排卵の促進、卵巣重量の増加、ホルモンの調節などの作用があります。
ビタミンEには血行促進作用もありますので、卵子に必要な栄養も届きやすくなります。

また、ビタミンC同様に高い抗酸化作用もありますので、卵子の老化を遅らせることができます。