日々の生活のなかで、私たちはさまざまなストレスや環境の変化にさらされています。
通常であれば、時間の経過とともに少しずつ慣れていけるものですが、ときに心と体がその変化についていけず、不調としてあらわれることがあります。
「気持ちが不安定になった」「職場に行こうとすると体が動かなくなる」――そんな状態が続くとき、それは“適応障害”かもしれません。
この記事では、当院に通われた方の実例をもとに、適応障害の症状や背景、そして整体と栄養療法によるアプローチについてご紹介していきます。
つらさを抱えている方や、大切なご家族を支えたいと思っている方にとって、少しでも希望や安心につながれば幸いです。
適応障害とは?
適応障害とは、環境の変化や強いストレスに心や体がうまく対応できず、さまざまな不調が現れる状態のことです。
新しい職場や人間関係、ライフスタイルの変化など――本来なら徐々に慣れていくはずの状況でも、そのストレスが大きすぎたり、自分の限界を超えていたりすると、心と体のバランスが崩れてしまうことがあります。
症状としては、次のようなものが見られます。
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気分が落ち込む
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不安感が強くなる
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夜眠れない
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胃腸の調子が悪くなる
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頭痛や体のだるさが続く
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やる気が出ない、仕事や学校に行けない
うつ病とは異なり、ストレスの原因がはっきりしているのが特徴です。
原因となっている状況から離れたり、心身のケアを行ったりすることで、回復に向かうことが期待できます。
当院では、こうした心身の不調に対し、身体の歪みや自律神経のバランスを整える整体と、体の内側からの回復力を高める栄養療法を組み合わせてサポートしています。
適応障害の症状について
適応障害の症状は人によってさまざまですが、大きく分けると「感情面」「身体面」「行動面」、そして「その他の不調」に分類できます。以下にそれぞれの特徴を紹介します。
1. 感情面の症状
適応障害では、感情の変化が大きく現れることがあります。たとえば、
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不安感:ちょっとしたことでも不安になり、頭から離れなくなる
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気分の落ち込み:気持ちが沈んで、何をしても楽しく感じられない
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イライラ:些細なことで腹が立ったり、感情が爆発しやすくなる
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感情の波が激しくなる:涙が出たり、急に怒りがこみ上げたりと、自分でもコントロールしづらい状態になることがあります
こうした感情の不安定さが日常生活に支障をきたすことも珍しくありません。
2. 身体的な症状
心の不調は、体にも影響を与えます。適応障害の方によく見られる身体のサインには、
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頭痛:肩こりや首のこりとともに、頭が重く感じることがある
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胃の不快感:ストレスで胃がキリキリしたり、食欲が落ちたりする
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めまい:ふわっとする感覚や、平衡感覚の乱れを感じることがある
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強い疲労感や倦怠感:しっかり寝ているのに疲れが取れない、だるさが続く
これらは自律神経のバランスが乱れているサインでもあります。
3. 行動の変化
心や体の不調が、行動面にも影響を及ぼすことがあります。
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人との関わりを避けるようになる:誰とも会いたくなくなり、家にこもりがちになる
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興味や関心がなくなる:以前は楽しめていた趣味や活動にも関心が持てなくなる
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ストレスをまぎらわせるための不健康な行動:過食やお酒の飲みすぎ、ネット依存などに走ることもあります
このような行動がさらに症状を悪化させてしまうこともあるため、早めの対処が大切です。
4. その他の症状
そのほかにも、以下のような症状が見られることがあります。
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睡眠の乱れ:夜眠れない(不眠)、逆に眠りすぎてしまう(過眠)、夜中に何度も目が覚めるなど
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集中力や記憶力の低下:ぼんやりしてしまったり、物事に集中できない状態が続くことがあります
これらの症状が積み重なることで、日常生活や仕事に大きな支障をきたす場合もあるのです。
適応障害の一般的な治療法
適応障害の治療では、「心のケア」「必要に応じた薬のサポート」「生活習慣の見直し」といった、いくつかの方法が組み合わされます。症状やその人の生活状況に合わせて、無理のない方法が選ばれるのが一般的です。
1. カウンセリングや心理療法
適応障害の治療でまず中心になるのが、カウンセリングや心理療法です。
専門のカウンセラーや心理士と話すことで、自分が抱えているストレスや悩みを整理し、どう向き合っていくかを一緒に考えていきます。
よく使われる方法には、
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認知行動療法(考え方のクセに気づき、より楽な捉え方を身につける)
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ストレスマネジメント(ストレスと上手につき合う方法を学ぶ)
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問題解決スキルの習得(具体的な困りごとへの対処法を見つける)
などがあります。
無理に気持ちを変えようとするのではなく、自分らしくストレスと付き合える力を育てることが目的です。
2. 薬によるサポート(薬物療法)
症状が強く、日常生活に支障をきたしている場合は、お薬の力を借りることもあります。
たとえば、不安感が強いときには抗不安薬、気分の落ち込みが続くときには抗うつ薬が処方されることがあります。
薬はあくまでも「つらい症状を和らげるための補助的な手段」です。
自己判断で使ったりやめたりせず、医師の指導のもと、慎重に使うことが大切です。
3. 生活習慣の見直し
心と体はつながっているため、日々の生活習慣も大きな影響を与えます。
治療の一環として、以下のような取り組みが勧められます。
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バランスのとれた食事をとる
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睡眠をしっかりとる
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軽い運動を取り入れる(散歩やストレッチでもOK)
また、深呼吸や瞑想など、心を落ち着ける「リラクゼーション法」を取り入れるのも効果的です。
こうした積み重ねが、回復を後押ししてくれます。
【症例紹介】適応障害と診断された30代男性
◆ ご来院時の状況
30代の男性。
主な症状は「全身のだるさ」「不安感」「ストレスへの弱さ」でした。
職場の人間関係に悩み、心と体の調子を崩してしまい、心療内科で適応障害と診断。休職中の状態で、家族がインターネットで当院を見つけてくださり、ご相談に来られました。
◆ 整体による自律神経の調整
初回のカウンセリングでは、全身に力が入らず、表情にも疲れが見られました。
施術では、まず全身のバランスを整え、筋肉の緊張を緩めることから始めました。さらに、脳と神経の緊張をやさしく緩和する手技も加え、深いリラックスを促しました。
通院を続ける中で、奥様から「ここに行った日は表情が明るくなって帰ってくる」と言われたそうです。
施術によって心身がゆるむと、自然治癒力が引き出され、気持ちも軽やかになります。施術後は会話も増え、雰囲気が前向きに変化していったとのことです。
適応障害の方は常に交感神経が高ぶり、不安や緊張が強くなりがちです。
整体では、その神経の緊張を優しく整え、安心感と回復の土台をつくっていきます。
◆ 栄養面からのサポート
施術と並行して、食生活の改善にも取り組んでいただきました。
内容としては、低糖質・高タンパクの食事にシフト。自律神経の安定を目的とした栄養療法です。
休職中ということもあり、ご自身で料理もされ、熱心に取り組んでくださいました。
食生活が整うことで、ストレスへの抵抗力が高まり、心の安定にもつながっていきました。
◆ 運動によるリズムづくりと自信回復
さらに、スポーツクラブにも通うようになり、週に数回、筋トレなどの運動を継続されました。
体重も減り、体も軽くなり、気分の面でも大きな変化が現れました。
もともと学生時代には熱心に運動されていた方でしたが、社会人になってからは運動習慣が減っていたそうです。
再び体を動かすことで筋力がつき、気持ちにもハリが出て、自信も取り戻していかれました。
◆ 無事に職場復帰、そして卒業へ
体調の改善にともない、主治医の許可も下り、無事に職場へ復帰されました。
もちろん職場の環境自体が変わったわけではありませんが、ご本人の心身の安定により、以前よりもストレスを受けにくくなっていました。
その後もしばらくは定期的にメンテナンス通院を続けていただき、最終的にはと笑顔で卒業されました。
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