執筆者:院長 上川名 修

足ゆらし操法

私は2005年ごろに今昭宏先生の操体講習会でこれらの操法を教わりました。やってもらった感覚はとても心地よかったのですが、教わった当初は特別効果的であるとは思わなかったので自分の施術には活用していませんでした。(ゆらしに対する自分の感覚がまだあまり開けていなかったせいもありますね)

でもある時、講習会の常連のMさんに足ゆらしをやってもらってからこの操法に対するイメージがガラッと変わりました。Mさんにやってもらったときに、何とも言えない充実感があったのです。足に触れられてたのに全身が変化した充足感がありました。

ちなみにMさんはプロの治療家ではなくて一般の主婦の方ですが、この操法の元となった足心道(そくしんどう)も学ばれていてスペシャリストなのです。

Mさんの操法を受けて以来、私も普段の施術で積極的に足ゆらしや足指もみを活用するようになりました。すると不思議とも思える施術効果が現れるようになったのです。

そんな不思議な体験についていくつか書いてみたいと思いますが、その前にこれらの操法についてどんなものなのか、簡単にご紹介しますね。

操体法の足ゆらし操法・足指もみ操法とは

通常「ゆらし」とか「指もみ」とかいう言い方で呼んでいます。
操体の創始者の橋本敬三氏が足心道(そくしんどう)という足で全身を整える民間療法をヒントに取り入れたものです。

やり方はあお向けに寝ている人の足に触れてゆらゆらゆらすというものです。
さらに足の指をもみながらゆらゆらするのが「足指もみ」です。
でもどちらかだけやるというよりだいたいワンセットで行ないます。

万人に共通する正しいやり方があるというよりは、受ける人が気持ちがいいようにやるのが正しいやり方なので、ゆらしを受けてる人に聞いてみて、その人が気持ちがいいと言えば正しく出来ていると思っていいでしょう。

効果

操体法では気持ちがいいようにやると何かしら良い変化が心身に訪れます。なので足ゆらしも気持ちがいいのでやってます。

その効果は一言で言えば、かなり深くリラックスできることだと思います。深く瞑想しているような状態に達する人もいます。

これまでの患者さんの体験では、

「力が抜ける」「身体が温かい」「呼吸が楽になる」「身体の感覚がなくなった」「雲に浮かんでいるよう」「体がなくなっちゃったみたい」「軽い」「体の中で鐘が鳴っている」「このまま眠りたい」「気持ちよすぎて何も話しかけられたくない」「チベットのお坊さんが見えた?!」

などなど、いろんな体験があります。

私の仮説では、ゆらしのゆらゆら感によって、お母さんの胎内にいた頃や赤ちゃんの頃に抱っこされていたときの深い記憶にアクセスされ、その結果心身共に深いリラックス状態に導かれるのではないかと考えています。なんとなくそう思っています。

余韻

足ゆらしは私は数分間(だいたい5分)くらいやることが多いです。それ以上でもそれ以下でもいいのですが、私はだいたいそれくらいします。それで、ゆらしを終えるときにゆらし操法の一番の極意があります。

ゆらしの終わらせ方で効果が倍増します。詳しくは省略しますが、ゆらしの効果はゆらしの終え方次第ともいえるくらい終わらせ方が重要なのです。

上手にゆらしを終えると、受けている人の足の指から施術者が手を離しているのにも関わらず、まだ手で触れられているような感覚が残ります。そして、ゆらしの余韻の振動が全身にじわ~~っと広がります。しばらくそれは続きます。

タイミング

ゆらしを行なうには受ける人に仰向けになってもらうので、仰向けの体勢がつらい人には不向きです。なので、私は全身のバランスが整った状態を作って、施術の最後にゆらしを行うことが多いです。

歪んでいる状態でゆらしをすると、体のどこかが痛かったり、気持ちよくなかったりします。ゆらゆらされている動きを見ても、不自然にどこかが引っかかっています。なのである程度全身の歪みが解消した状態でゆらしを行なうとよいと考えています。

歪みが残っていると、足ゆらしを終えたあとの余韻の気持ちよさも部分的になります。歪みが解消していると、ゆらし後の余韻は頭のてっぺんから指先まで気持ちよさとともに全身に広がります。

足揺らし操法の症例

不思議な症例をいくつかご紹介します。

腎臓病が改善

見るからに虚弱体質の女性(20代主婦)が来院しました。色が白くか細くて声にも覇気がありません。幼い頃から病気がちで、様々な感染症や合併症で入院や手術をしてきたそうです。腎臓の病気で現在も定期的に病院にかかっています。

免疫力も低く、ちょっとした気温の変化や疲れで風邪を引いて寝込むそうです。冷え症もひどいとのことでした。

整体で体の歪みを整え、最後にゆらしをしました。そしたらすごく体が温かくなって最高に気持ちがよいとのこと。

それから1週間経って、また来院しました。「調子はどうですか?」と尋ねると、前回足ゆらしをしてもらって以来、ずーっと体がぽかぽかしてていまだにその温かい状態が続いているとのことでした。

これには私もびっくりしました。そんなわけないでしょう?といっても「いや、ほんとにあれから温かくてすごく調子良いんです。」とおっしゃいます。数分間足をゆらしたからそれで一週間も温かいとは考えにくいです。ゆらしの効果というよりも、ゆらしが気持ちよかったために「あ~気持ちいいなぁ」と味わっているうちにこの方の自然治癒力のスイッチが入ったんでしょうね。

「そんなによかったんなら、ぜひ覚えて帰って、ご主人にやってあげて、それで旦那さんに覚えさせて自分もやってもらうといいですよ。」とお話して、いろいろとコツを伝授しました。

旦那さんは仕事も忙しく不眠で悩んでいるということでしたが、家で奥さんが足ゆらしをやってあげるとすやすや眠ってしまうようになって不眠も解消したそうです。でもそのおかげで奥さんがゆらしをやってもらえないことに・・・。

だけども、だんだんご主人もゆらしをやってくれるようになって、毎晩お互いに操法をするようになったそうです。そしたら、病院に定期検査に行ったら腎臓の数値が正常レベルになったと喜びのメールをいただきました。

原因不明の恥骨痛

30代の美容師の患者さん。原因不明の恥骨周辺の痛みで悩んでいます。病院に行ったりカイロプラクティック院にも通ったけどまったく改善が見られないとのことです。

そこで、操体法をやってみようと思ったのですが、どこをどう動かしてもまったく気持ちよさがありません。骨盤や股関節を動かしても全然効果が出る気配がないのです。

幸い、仰向けが楽だというので、足ゆらし(指もみメイン)をやってみたら「これは気持ちがいいです。」とのこと。気持ちがいいのが正解なので、普段より長い時間かけて行ないました。結局この日の施術はこれだけでした。

何をしてもだめだったので、やれることがそれしかなくてやったのですが、そうしたらなんと!恥骨の痛みがほとんど消えてしまったのです。

それから何度か通院するうちに、操体法の施術でも気持ちよさを味わえるようになってきて、セルフケアも覚えてもらって体の歪みが整うにつれ、日常生活ではほとんど気にならないレベルになったので通院も終了したのでした。

どこに行っても改善しないので、重大な病気ではないのかととても不安だったそうです。だけどそんな心と身体の緊張が足ゆらしで解放されたら痛みも楽になったのです。「こんなことで楽になるのだからそんなに心配することはないと思いますよ」と話すととても気持ちが楽になったようです。実際通院するたびに症状も出にくくなっていったのでした。

手のひらから何かがぼわーっと出た

40代の女性クライアントさん。7年以上前から定期的に通院されている常連さんです。来月で県外に引っ越してしまうので今日とあと一回来てそれでお別れです。

以前は来院のたびに様々な不調を抱えていましたが、セルフケアのひとり操体も覚えてもらってこまめに実践しているので調子よく過ごされているようです。

来院時はメンテナンスの整体をしています。より調和度が高まるように細かく繊細に調整を行っています。

この日は歪みも少なく体調も良かったので、操体法による調整も早めに終わったのでいつもより長めに足ゆらしをしました。最後の細かい振動も丁寧に味わって頂きました。

そうしたら、「先生、私の手から何かがぼわーっと出てる!手が宙に浮きそうなくらい!こんなことは初めてです。びっくりです!」と仰るのです。

7年前から来られているので足ゆらしも毎回ではないけれど今までに何度も受けた経験もあります。手先にジーンとした感じがすることはあったけれど、今回のように手が浮くくらいにぼわーっとはっきり何かが出ている感じがしたのは初めての経験でとてもびっくりされていました。

その後に光線療法をして、最後にお会計時も「まだ手から何か出ている余韻が残ってます!」と興奮気味にお話されていました。歪みが少なく全身のエネルギーの流れも良い状態だったので、いつもよりもエネルギーを感じやすかったのかと思います。