
「いろいろ試したけれど、なかなか良くならない…」
股関節痛や膝痛でお悩みの方の中には、そのような経験をされている方も少なくありません。
今回ご紹介するのは、股関節痛と膝痛で来院された60代女性の症例です。
この方は、整骨院、整形外科、鍼灸院、整体院など、これまで11軒もの治療院や医療機関に通われていました。痛み止めやブロック注射、関節の水抜きなど、できることは一通り試してこられたそうです。
それでも症状は改善せず、12軒目として当院に来院されました。
お話を伺う中で感じたのは、この方が良くならなかったのは「努力が足りなかったから」ではないということです。むしろ、人一倍真剣に身体と向き合い、改善のために頑張り続けてこられました。
しかし、その頑張りが知らず知らずのうちに回復を妨げていた可能性がありました。
今回は、この症例を通して「なぜ11軒通っても改善しなかったのか」、そして身体が本来持っている回復力についてお伝えしたいと思います。
股関節痛と膝痛で来院された60代女性

日常生活にも支障を感じる状態でした
今回ご紹介するのは、股関節痛と膝痛で来院された60代女性の症例です。
歩くと股関節や膝に痛みが出るため、外出するのも億劫になり、日常生活のさまざまな場面で不自由を感じておられました。
症状が長く続いていたこともあり、「このまま悪くなってしまうのではないか」という不安も抱えておられたそうです。
当院は12軒目の来院先でした
詳しくお話を伺うと、これまで本当に多くの治療を受けてこられたことが分かりました。
最初は近所の整骨院で保険治療を受け、その後は外科や整形外科を4軒受診。さらに鍼灸院を2軒、整体院を4軒と、改善を求めてさまざまな場所へ足を運ばれていました。
つまり、当院は12軒目の来院先だったのです。
ここまで通院を重ねてきたということは、それだけ症状に悩み、本気で改善したいと思っていた証拠でもあります。
私は症状が長引いている方のお話を伺うたびに感じるのですが、改善しない方の多くは決して努力不足ではありません。むしろ真面目で頑張り屋の方ほど、一生懸命に治療やセルフケアに取り組んでおられます。
今回の女性もまさにそのような方でした。
そして、お話を詳しく伺う中で、なぜ11軒通っても改善しなかったのか、その理由が少しずつ見えてきたのです。
これまで受けてきた治療の経緯

改善を求めてさまざまな治療を受けていた
この女性は、決して何もしてこなかったわけではありません。
最初は近所の整骨院に通い、週に2回ほどのペースで施術を受けていたそうです。しかし思うような変化は見られず、その後は外科や整形外科を4軒受診されました。
病院では痛み止めの処方を受けたり、関節の水を抜いたり、ブロック注射を受けたりと、その時々で勧められた治療に真剣に取り組んでこられました。
それでも改善が見られなかったため、今度は鍼灸院を2軒、整体院を4軒と、少しでも良くなる可能性を求めて通院先を変えながら努力を続けていたのです。
良くなるために一生懸命頑張っていた
お話を伺っていて印象的だったのは、この方が本当に前向きに治療へ取り組んでいたことでした。
勧められた施術はできるだけ受ける。
教わったセルフケアも真面目に続ける。
少しでも改善の可能性があるなら試してみる。
その姿勢は素晴らしいものだったと思います。
しかし、身体というものは「頑張れば頑張るほど良くなる」とは限りません。
むしろ、良くなろうとして続けていることが、知らず知らずのうちに回復を妨げてしまうこともあります。
実際に詳しくお話を伺うと、これまで受けてきた施術やセルフケアの中には、「それを続けたら身体がつらくなってしまうのではないか」と感じる内容も少なくありませんでした。
お話を伺って見えてきた改善しない理由

激痛を我慢しながら施術を受けていた
詳しくお話を伺うと、これまで通っていた治療院では強い痛みを伴う施術を受けることが多かったそうです。
施術中はかなり痛かったものの、
「効いている証拠だから」
「良くなるためには我慢が必要だから」
と言われ、痛みをこらえながら受け続けていました。
さらに驚いたのは、施術を受けた後の状態です。
施術後は毎回のように痛みが強くなり、3日ほどは普段以上につらい状態が続いていたとのことでした。
もちろん、一時的な反応が出ることもあります。しかし毎回強い痛みが続き、身体が明らかに苦しそうなサインを出しているのであれば、その声にも耳を傾ける必要があります。
セルフケアでも身体の声を無視していた
セルフケアについても同じような状況でした。
教わった体操やストレッチは、行うたびに痛みを感じていたそうです。
それでも、
「痛くても続けてください」
「毎日やらないと良くなりません」
と指導されていたため、我慢しながら続けていました。
私はお話を聞きながら、「身体はずっとサインを出していたのではないか」と感じました。
痛みは身体からのメッセージです。
もちろん全ての痛みを避ける必要はありませんが、身体が嫌がっていることを無視し続ければ、回復しようとする力まで弱めてしまうことがあります。
良くなるために頑張っていた。
言われたことを真面目に続けていた。
だからこそ、この女性は長い間苦しんでしまったのかもしれません。
そして私は改めて、身体を良くするために本当に大切なのは、「理論的に正しいこと」ではなく、「今その身体が何を求めているかを感じ取ること」だと感じました。
身体にとって正しいことと理論上正しいことは違う

「痛いから鍛える」が合わない人もいる
世の中には、
「筋力が足りないから鍛えましょう」
「硬いからストレッチをしましょう」
「歪んでいるから矯正しましょう」
という考え方があります。
もちろん、それらが役に立つ方もいます。
実際に症状が改善するケースもありますし、その考え方自体を否定するつもりはありません。
しかし、身体は一人ひとり違います。
同じ股関節痛や膝痛であっても、身体の状態や回復の段階は人によってまったく異なります。
ある人には効果的なことが、別の人には負担になってしまうこともあるのです。
身体の声に耳を傾けることが大切
今回の女性の場合、施術でもセルフケアでも身体は何度もサインを出していました。
痛い。
つらい。
やりたくない。
休みたい。
身体はそのようなメッセージを送り続けていたのかもしれません。
しかし、「これが正しい治療だから」「続ければ良くなるはずだから」という考えが優先され、その声は置き去りにされていました。
私たちはつい頭で考えた正しさを信じてしまいます。
けれど本当に大切なのは、理論に身体を合わせることではありません。
身体に理論を合わせることです。
身体は常に回復するための方向性を示しています。
その声を無視して無理を重ねるほど、回復から遠ざかってしまうことがあります。
だからこそ当院では、「何をするか」よりも先に、「身体が何を求めているか」を大切にしています。
身体の声に耳を傾けること。
それが回復への第一歩になると考えているからです。
身体は本来、回復する力を持っている

治らないのには必ず理由がある
私は長年施術をしていて、「治らないのには必ず理由がある」と感じています。
身体には本来、傷を修復し、バランスを整え、健康を取り戻そうとする力が備わっています。
風邪をひいても、擦り傷ができても、私たちは意識しなくても自然に回復していきます。
股関節痛や膝痛も同じです。
もちろん症状の程度や状態によって個人差はありますが、身体は常に良くなろうと働いています。
それなのに改善しないとしたら、回復する力が足りないのではなく、その力が十分に発揮できない状況になっているのかもしれません。
回復を妨げるものを取り除く
症状を改善しようとすると、多くの方は「何かをしなければ」と考えます。
新しい治療法を探す。
もっと効果的なセルフケアを探す。
筋トレやストレッチを増やす。
しかし、身体が求めているのは「何かを足すこと」ではなく、「余計なことをやめること」の場合もあります。
今回の女性も、身体に合わない施術やセルフケアを続けることで、知らず知らずのうちに回復を妨げていた可能性がありました。
身体は常に最善を尽くしています。
だからこそ必要なのは、身体を無理やり変えようとすることではありません。
身体の働きを信頼し、その力が発揮されやすい環境を整えることです。
余計な力みを手放す。
無理をやめる。
身体の声に耳を傾ける。
すると不思議なことに、身体は自ら回復する方向へと動き始めることがあります。
私はその姿をこれまで何度も見てきました。
まとめ|回復しているのは身体自身
今回ご紹介した60代女性は、当院に来院されるまでに11軒もの治療院や医療機関を訪れていました。
改善したい一心で施術を受け、セルフケアにも真面目に取り組んでこられました。
しかし、その努力が報われなかったのは、身体に回復力がなかったからではありません。
身体が発しているサインよりも、「こうすれば良くなるはず」という理論や常識を優先してしまっていたことが、回復を妨げていた可能性がありました。
私は整体師ですが、患者さんを治しているわけではありません。
実際に回復しているのは、その人自身の身体です。
身体には本来、健康を取り戻そうとする力があります。
だからこそ大切なのは、その力を無理に引き出そうとすることではなく、邪魔をしないこと。
身体の声に耳を傾けること。
そして自然の摂理に委ねることです。
もしあなたも股関節痛や膝痛がなかなか改善せず悩んでいるのであれば、「もっと頑張らなければ」と考える前に、今行っていることが本当に身体に合っているのかを見直してみてください。
回復への近道は、新しい何かを探すことではなく、身体が求めていないことを手放すことかもしれません。
身体は今日も、あなたが思っている以上に一生懸命回復しようと働いています。
追記
来院三回目で、立っているだけで痛くて歩けなかったのが、歩けるようになったとのことです。
自転車にも乗れるようになったとのことです。
順調に回復しています。

