
先日、施術を終えた50代の男性のお客様から、ちょっと不思議な感想をいただきました。
「今日は身体が不思議な感じになったんです」
「身体が宙に浮いているような感じで、自分がどうにかなったのかと思いました」
この方は2年ほど前から通院されている方です。これまでも何度も施術を受けていらっしゃいますが、今回はいつもとは違う感覚を体験されたようです。
実は、整体の施術中にこうした不思議な体験をされる方は、時々いらっしゃいます。
身体がふわっと軽くなったように感じたり、自分の身体がどこにあるのかわからなくなったり、身体と周囲の空間との境界が曖昧になったり。
普段の生活では、あまり経験することのない感覚かもしれません。
もちろん、こうした体験が誰にでも起こるわけではありませんし、毎回同じような感覚になるわけでもありません。
ただ、身体が深くリラックスしたときには、私たちが普段当たり前だと思っている身体感覚にも、思いがけない変化が起こることがあるのです。
深いリラックスによって瞑想状態になることがある

整体の施術を受けているとき、身体の緊張が少しずつ緩み、心も静かになっていくことがあります。
普段、私たちは仕事や家事、人間関係など、さまざまなことを考えながら生活しています。頭の中では常に何かを考え、次に何をするかを判断し、身体も無意識のうちに緊張していることが少なくありません。
ところが、安心して身体を委ねられる状態になると、そうした普段の意識の働きが静まっていくことがあります。
頭で考えることが静まり、身体の感覚が深まる
深くリラックスしているときは、何かをしよう、何かを変えようという意識が薄れていきます。
身体をどうにかしようと頑張る必要もなく、ただそこに身を委ねているような感覚です。
普段は頭で考えながら身体を動かすことが多いと思いますが、このような状態になると、頭で考えることよりも身体の感覚そのものが前面に出てくるようになります。
この状態は、瞑想をしているときの感覚に似ています。
瞑想にもさまざまな方法がありますが、深い瞑想状態では、思考が静まり、時間の感覚や身体の感覚が普段とは違って感じられることがあります。
自分の身体に意識を向けているようでいて、同時に身体の存在をあまり意識していない。そんな不思議な感覚を体験する方もいます。
何かを起こそうとしなくても自然に訪れる
興味深いのは、こうした状態が本人の努力によって起こるわけではないということです。
「深くリラックスしよう」
「瞑想状態になろう」
「身体の感覚を変えよう」
と頑張る必要はありません。
むしろ、何かをしようとする意識が緩み、身体の感覚に身を委ねているうちに、自然とそのような状態になることがあります。
私が行っている多次元操体法でも、こうした身体の自然な変化を大切にしています。
無理に身体を動かしたり、意識的に何かを起こそうとしたりするのではなく、身体が心地よいと感じる方向に身を委ねていく。
施術者が一方的に身体を変えようとするのではなく、身体自身がどのように反応し、どのように変化していくのかを見守るのです。
すると、普段の意識では気づかなかったような感覚や変化が現れることがあります。
それは、単に筋肉の緊張が緩むということだけではなく、普段とは異なる自分自身の身体との関わり方を体験することでもあるのだと思います。
身体の感覚が薄れ、自分と外の世界との境界が曖昧になる

深いリラックス状態になると、普段は当たり前のように感じている身体の感覚にも変化が現れることがあります。
例えば、自分の身体がどこまであるのか、身体と周囲の空間との境目がはっきりしなくなるような感覚です。
身体が軽くなったり、反対に身体が大きく広がったように感じたり、宙に浮いているような感覚を覚える方もいます。
こうした体験は、普段の生活ではなかなか味わうことのないものかもしれません。
自分の身体が自分のものであるという感覚
私たちは普段、自分の身体がここにあって、身体の外側には空間や周囲の世界があるということを、ごく自然に感じています。
自分の手足がどこにあるのか、身体がどのような姿勢になっているのか。特に意識しなくても、脳や神経系はさまざまな感覚情報を統合し、自分の身体の位置や状態を把握しています。
ところが、深くリラックスした状態では、こうした身体の感じ方が普段とは違ってくることがあります。
身体の輪郭がぼんやりしたり、身体の重さをあまり感じなくなったりする。
すると、自分の身体と外の世界との境界が曖昧になったように感じることがあるのです。
身体感覚はいつも同じではない
考えてみると、私たちが感じている身体の感覚は、決して一定ではありません。
例えば、温泉にゆっくり浸かっているとき、身体の重さがなくなったように感じることがあります。また、深い瞑想や静かな時間を過ごしているときに、自分の身体が普段とは違った感覚になることもあります。
身体そのものが変わったわけではなくても、身体を感じ取る感覚や意識のあり方によって、自分の身体の存在感は変化するのです。
先ほどのお客様が体験された「身体が宙に浮いているような感覚」も、こうした身体感覚の変化のひとつなのかもしれません。
普段、私たちは身体を当たり前の存在として捉えていますが、実は身体の感じ方には、まだまだ興味深い側面があるように思います。
整体でなぜこのような不思議な体験が起こるのか?

では、なぜ整体の施術中に、このような不思議な体験が起こるのでしょうか。
もちろん、すべての体験をひとつの理由で説明することはできません。ただ、身体の緊張や自律神経の働き、そして身体感覚と意識の関係から考えてみると、興味深いことが見えてきます。
身体の緊張が緩むと、心にも変化が起こる
私たちの身体と心は、別々に働いているわけではありません。
精神的なストレスが続くと身体が緊張したり、身体の不調が続くと気持ちまで落ち込んだりするように、身体と心は常に影響し合っています。
自律神経もその関係に深く関わっています。
仕事や人間関係などで緊張が続いているときは、交感神経が優位になりやすく、身体は活動や警戒に適した状態になります。
一方、安心して身体を休められる環境では、副交感神経の働きが関わりながら、心身が休息しやすい状態へと移行していきます。
整体の施術によって身体の緊張が緩み、安心して力を抜けるようになると、心の状態にも変化が現れることがあります。
脳や神経系による身体感覚の変化
私たちが感じている身体の位置や大きさ、重さなどは、筋肉や関節、皮膚などから送られる情報を脳や神経系が統合することで成り立っています。
例えば、目を閉じていても自分の手足の位置がわかるのは、こうした感覚情報が絶えず脳に届けられているからです。
ところが、深くリラックスしているときには、普段とは違った身体感覚を体験することがあります。
身体の重さが薄れたり、身体の輪郭が曖昧になったり、浮いているように感じたりするのも、その一例と考えられます。
もちろん、今回のお客様の体験がどのような仕組みで起こったのか、正確に説明することはできません。
ただ、身体の緊張が緩むことと、身体を感じ取る意識の変化には、何らかの関係があるのではないかと思います。
身体を整えることは、神経系の働きにも関係している
整体というと、筋肉をほぐしたり、骨格の歪みを整えたりすることをイメージする方が多いと思います。
しかし、身体は筋肉や骨格だけで成り立っているわけではありません。
身体の感覚を受け取り、脳や神経系を通して全身の状態を調整する働きもあります。
そう考えると、身体に優しく触れたり、心地よい方向へゆっくり動かしたりする整体は、単に筋肉や関節に働きかけるだけではなく、身体全体の感覚や神経系の働きにも関係していると考えられます。
身体を整えるということには、私たちが普段考えている以上に、奥深い側面があるのかもしれません。
多次元操体法は身体の感覚に身を委ねる整体

ここまで、深いリラックスによって起こる身体感覚や意識の変化についてお話ししてきました。
私が行っている多次元操体法も、こうした身体の自然な働きを大切にしています。
多次元操体法の基本にあるのは、身体を無理に変えようとするのではなく、身体が本来持っている調整する力を引き出すという考え方です。
身体の声に耳を傾ける
私たちは普段、頭で考えて身体を動かすことに慣れています。
「姿勢を良くしよう」
「肩の力を抜こう」
「身体の歪みを直そう」
このように、頭で考えて身体をコントロールしようとすることが多いのではないでしょうか。
しかし、多次元操体法では、頭で考えることよりも、身体が感じている快・不快の感覚を大切にします。
どちらに動くと心地よいのか。
どのくらいの力加減が気持ちよいのか。
身体は今、何を求めているのか。
そうした感覚を丁寧に感じ取っていきます。
身体に優しく触れたり、ゆっくり動かしたり、心地よく揺らしたりしながら、身体の反応を観察していくのです。
身体をコントロールしようとしない
多次元操体法では、施術者が一方的に身体を動かしたり、力ずくで歪みを整えたりすることはありません。
身体が心地よいと感じる方向に動いていくと、本人の意思とは関係なく、自然に身体が動き出すことがあります。
これを「自発動」と呼んでいます。
自分で動かそうとするのではなく、身体の内側から自然に動きが生まれてくるのです。
こうした身体の反応を邪魔せず、無理のない範囲で見守っていくことを大切にしています。
身体には自分自身を整える知性がある
私たちは、身体のことをすべて頭で理解できるわけではありません。
心臓は自分で動かそうとしなくても動き続けていますし、呼吸も意識しなくても自然に繰り返されています。
身体には、私たちの意識を超えて働いている仕組みがたくさんあります。
多次元操体法では、こうした身体が本来持っている働きを「身体の知性」と捉えています。
頭で考えて身体を変えようとするのではなく、身体の知性を信頼して、その自然な働きを妨げないようにする。
それが、多次元操体法の大切にしている考え方です。

