朝起きられない、立ち上がるとフラフラする、学校へ行こうとすると頭痛や腹痛が出る、なんとなく体がだるくて動けない――このような不調を訴える子どもたちが、近年とても増えています。病院で検査をしても大きな異常が見つからず、周囲から理解されにくいため、本人もご家族も悩みを抱えやすい症状のひとつです。こうした背景にあるものとして知られているのが「起立性調節障害」です。

起立性調節障害は、怠けや気持ちの弱さが原因ではありません。血圧や心拍、体温、睡眠リズムなどを調整している自律神経の働きが乱れることで、朝起きられない、立ちくらみ、めまい、倦怠感、集中力低下など、さまざまな症状があらわれます。特に成長期の子どもや思春期の年代に多く見られ、学校生活や日常生活に大きな影響を与えることも少なくありません。

では、なぜ今この起立性調節障害が増えているのでしょうか。そこには、スマホやゲームによる夜更かし、睡眠の質の低下、運動不足、姿勢の悪化、食生活の乱れ、ストレスの増加など、現代ならではの生活環境が深く関係していると考えられます。便利になった一方で、子どもたちの体と心には大きな負担がかかっているのです。

この記事では、起立性調節障害が増えている理由を自律神経と現代生活の視点からわかりやすく解説します。さらに、整体ではどのようなサポートができるのか、家庭でできるケアにはどんな方法があるのかについてもお伝えしていきます。お子さまの不調で悩んでいる方、原因がわからず不安を感じている方の参考になれば幸いです。

起立性調節障害とはどんな状態なのか

朝起きられない・立ちくらみは怠けではない

起立性調節障害という言葉を初めて聞く方もいるかもしれません。これは主に小学生高学年から中学生、高校生に多く見られる不調で、朝なかなか起きられない、立ち上がるとフラフラする、頭痛や吐き気がある、体がだるい、学校へ行こうとすると調子が悪くなるなど、さまざまな症状があらわれます。

こうした症状は、見た目ではわかりにくいため、「怠けているだけでは?」「気持ちの問題では?」と誤解されてしまうことも少なくありません。しかし、本人は行きたくても行けない、頑張りたくても体がついていかない状態であり、とてもつらい思いをしています。

また、日によって体調に波があるのも特徴です。午前中は動けなくても午後になると少し元気になることもあり、そのため周囲から理解されにくいことがあります。しかし、これは仮病ではなく、体の機能がうまく働いていないために起こる症状です。まずは「怠けではなく身体の不調である」と理解することが大切です。

自律神経と血流調整の乱れが関係している

私たちの体は、立ち上がったときに重力の影響で血液が下半身へ下がります。通常であれば、自律神経がすばやく働き、血管を収縮させたり心拍数を調整したりして、脳へ十分な血液が届くようにコントロールしています。

ところが、起立性調節障害ではこの調整がうまくいかず、立ち上がったときに脳への血流が不足しやすくなります。その結果、立ちくらみ、めまい、動悸、頭痛、倦怠感などの症状が起こりやすくなるのです。

さらに、自律神経は血流だけでなく、睡眠、体温、消化、ホルモンバランス、ストレスへの対応などにも関わっています。そのため一度バランスが崩れると、朝起きられないだけでなく、食欲不振や気分の落ち込み、集中力低下など、全身にさまざまな影響が出ることがあります。

起立性調節障害を理解するうえで大切なのは、「ただ朝が弱い体質」ではなく、自律神経の乱れによって体全体の調整機能が低下している状態だということです。だからこそ、生活習慣や体のバランスを整える視点が重要になってきます。

なぜ今、起立性調節障害が増えたのか?

昔と違う生活環境が子どもの体に影響している

起立性調節障害は以前から存在していた不調ですが、近年になって相談件数や認知度が高まり、「増えている」と感じる方が多くなっています。その背景には、子どもたちを取り巻く生活環境の大きな変化があります。

昔に比べると、外で遊ぶ時間は減り、室内で過ごす時間が増えました。歩く機会や体を動かす機会が少なくなることで、筋力や持久力が低下し、血流を支える力も弱くなりやすくなります。特にふくらはぎの筋肉は“第二の心臓”とも呼ばれ、下半身の血液を上へ戻す大切な役割があります。その働きが弱くなると、立ちくらみや疲れやすさにもつながります。

また、スマホやタブレット、ゲーム機などの普及によって、夜遅くまで画面を見る生活が当たり前になりました。便利で楽しい反面、睡眠時間の不足や体内時計の乱れを招きやすく、自律神経に負担をかける原因になります。

さらに、便利な生活によって不便さが減ったことも一因です。昔は歩く、運ぶ、外で遊ぶ、家の手伝いをするなど、日常生活そのものが自然な運動になっていました。現代では体を使わなくても生活できるようになった分、意識して体を動かさなければならない時代になっています。

心と体のストレスが慢性的に増えている

現代の子どもたちは、体だけでなく心の面でも多くの負担を抱えています。学校生活、人間関係、勉強、受験、習い事、将来への不安など、年齢に関わらずさまざまなストレスにさらされています。真面目で頑張り屋の子ほど無理をしやすく、限界まで我慢してしまうことも少なくありません。

ストレスを感じると、体は緊張モードになり、自律神経のうち交感神経が優位になります。本来であれば休息時に働く副交感神経との切り替えが必要ですが、緊張状態が続くと体がうまく休めなくなります。その結果、眠りが浅くなる、疲れが取れない、朝起きられないといった不調につながっていきます。

また、最近では情報量の多さも見逃せません。SNSなどを通じて常に多くの情報が入り、人と比べやすい環境の中で、知らず知らずのうちに心が疲れてしまう子もいます。体は休んでいても、脳や神経が休めていない状態が続けば、自律神経は乱れやすくなります。

起立性調節障害の増加には、単に体質だけではなく、現代社会そのものが持つ生活習慣やストレス環境が深く関係していると考えられます。だからこそ、症状だけを見るのではなく、日々の暮らし全体を見直すことが大切です。

起立性調節障害が増えた理由1:スマホ社会が自律神経に与える影響

夜更かしとブルーライトで睡眠リズムが乱れる

現代の子どもたちにとって、スマホやタブレットはとても身近な存在です。連絡手段としてだけでなく、動画視聴、ゲーム、SNS、学習など、日常生活のさまざまな場面で使われています。便利である一方で、使い方によっては自律神経に大きな負担をかけることがあります。

特に問題になりやすいのが、夜遅くまで画面を見る習慣です。スマホやタブレットの画面から出る強い光は、脳に「まだ昼間だ」と錯覚させ、眠気を促すホルモンであるメラトニンの分泌に影響するといわれています。その結果、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりしやすくなります。

睡眠は、自律神経を整え、体と脳を回復させる大切な時間です。しかし、就寝時間が遅くなったり睡眠の質が下がったりすると、十分に回復できないまま朝を迎えることになります。すると朝起きることがさらに難しくなり、生活リズムが乱れる悪循環に入りやすくなります。

成長期の子どもにとって睡眠不足は、疲れが取れないだけでなく、集中力低下やイライラ、免疫力の低下にもつながります。起立性調節障害の背景を考えるうえでも、睡眠の問題はとても重要な要素です。

脳の興奮状態が続き休息できなくなる

スマホの影響は光だけではありません。動画、ゲーム、SNSなどは脳に多くの刺激を与えます。次々に情報が流れてくる動画、勝敗が気になるゲーム、通知が気になるSNSなどは、脳を常に活動モードにしやすい特徴があります。

本来、夜は心と体を落ち着かせ、副交感神経が優位になることで休息モードへ切り替わっていきます。しかし、寝る直前まで刺激の強いコンテンツに触れていると、交感神経が優位なままとなり、体は布団に入っていても神経が休めない状態になりやすいのです。

また、SNSでは人間関係の悩みや比較によるストレスが生まれることもあります。楽しい道具であるはずのスマホが、知らないうちに心の緊張を増やしてしまうケースも少なくありません。

もちろん、スマホそのものが悪いわけではありません。大切なのは使い方です。使用時間を決める、寝る1時間前は画面を見ない、夜は通知をオフにするなど、神経が休める時間を意識的につくることが、自律神経を守るために大切です。

起立性調節障害が増えた理由2:運動不足と姿勢の悪化が不調を招く

筋力低下で血液を押し上げる力が弱くなる

起立性調節障害を考えるうえで、運動不足は見逃せない要因のひとつです。現代の子どもたちは、昔に比べて外遊びや歩く時間が減り、体を動かす機会そのものが少なくなっています。習い事や勉強で忙しく、公園で遊ぶ時間が取りにくい子も少なくありません。

体を動かす機会が減ると、筋力や持久力が低下しやすくなります。特に重要なのが、足の筋肉です。ふくらはぎや太ももの筋肉は、立っているときに下半身へたまった血液を心臓へ戻すポンプのような役割を担っています。これらの筋肉が弱くなると、血液を上へ押し戻す力が不足し、立ち上がったときに脳への血流が不足しやすくなります。

その結果、立ちくらみ、めまい、動悸、疲れやすさなどの症状が起こりやすくなります。少し動いただけで疲れてしまうため、さらに運動を避けるようになり、体力が落ちるという悪循環に入ることもあります。

激しい運動をする必要はありません。散歩や軽い体操、ストレッチなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつくることが、体力回復の第一歩になります。

猫背やストレートネックが自律神経を乱しやすい

運動不足とあわせて増えているのが、姿勢の悪化です。長時間のスマホ操作やゲーム、タブレット学習、デスクワークのような生活習慣により、猫背や巻き肩、ストレートネックの子どもが増えています。

姿勢が崩れると、首や肩、背中まわりの筋肉が常に緊張しやすくなります。首の周辺には自律神経と関わりの深い部位が多く、強いこわばりや負担が続くことで、神経のバランスにも影響しやすくなります。

また、猫背姿勢では胸が開きにくくなり、呼吸が浅くなりがちです。呼吸が浅い状態が続くと、体は緊張しやすくなり、リラックスを司る副交感神経が働きにくくなることがあります。すると疲れが取れにくくなり、眠りの質にも影響していきます。

姿勢は見た目の問題だけではなく、体の機能全体に関わる大切な要素です。座り方や机の高さを見直す、こまめに体を動かす、首や肩の緊張をやわらげるなど、日常の小さな工夫が不調改善につながります。

起立性調節障害が増えた理由3:食生活の変化と栄養不足の問題

朝食抜きや糖質過多でエネルギー不足になる

起立性調節障害を抱える子どもたちの中には、食生活の乱れが関係しているケースも少なくありません。体を整えるためには睡眠や運動だけでなく、毎日の食事から必要な栄養をしっかり補うことが大切です。

特に増えているのが、朝食を食べない習慣です。朝は食欲がない、時間がない、ギリギリまで寝ていたいなどの理由から、何も食べずに登校する子もいます。しかし、朝食は眠っていた体と脳を目覚めさせ、1日の活動エネルギーを補給する大切な食事です。朝食を抜くと、低血糖のような状態になりやすく、だるさや集中力低下、ふらつきにつながることがあります。

また、手軽に食べられるパンやお菓子、ジュース、麺類など、糖質中心の食事に偏っている場合も注意が必要です。糖質は素早くエネルギーになりますが、それだけでは体を支える材料が不足しやすくなります。血糖値の上下が大きくなることで、眠気やイライラ、疲れやすさを感じやすくなることもあります。

忙しい毎日の中でも、卵、納豆、味噌汁、おにぎり、ヨーグルトなど、簡単でもバランスを意識した朝食をとることが、体調を整える第一歩になります。

鉄・たんぱく質・ミネラル不足が回復力を下げる

体の調子を整えるためには、カロリーだけでなく「何を食べるか」が重要です。特に成長期の子どもは、体づくりのために多くの栄養素を必要とします。不足が続くと、自律神経の働きや回復力にも影響が出やすくなります。

たとえば、鉄は全身に酸素を運ぶために欠かせない栄養素です。不足すると疲れやすい、頭がぼんやりする、立ちくらみが起こりやすいなどの不調につながることがあります。特に成長期や思春期は必要量が増えるため、意識して摂りたい栄養素です。

たんぱく質は筋肉や血液、ホルモン、神経伝達物質など、体のあらゆる材料になります。不足すると体力の低下や回復の遅れにつながります。また、マグネシウムや亜鉛などのミネラル、ビタミンB群なども神経の働きを支えるうえで重要です。

もちろん、食事だけですべてが解決するわけではありません。しかし、栄養状態が整うことで体の土台が安定し、睡眠や運動、整体などのケアも活かされやすくなります。起立性調節障害の改善には、毎日の食事を見直すことも大切な視点のひとつです。

整体から見た起立性調節障害へのアプローチ

首・背骨・骨盤・呼吸を整える重要性

起立性調節障害は、自律神経の働きが乱れることで起こる不調ですが、自律神経は脳だけでなく、首や背骨、骨盤、筋肉の緊張、呼吸の状態など、体全体と深く関わっています。そのため、整体では体のバランスを整えることで、回復しやすい状態へ導くことを目指します。

特に大切なのが、首まわりの緊張です。スマホや勉強、姿勢の崩れなどによって首や肩がこわばると、血流や神経の働きに影響しやすくなります。首は頭と体をつなぐ重要な場所であり、負担が集中しやすい部分でもあります。やさしく緩めていくことで、体全体が楽になることも少なくありません。

また、背骨や骨盤のバランスも重要です。背骨は体を支える柱であり、姿勢や呼吸、全身の動きと関係しています。骨盤が傾いたり体の重心が崩れたりすると、筋肉に余計な負担がかかり、慢性的な緊張を生みやすくなります。そうした状態を整えることで、体が本来の働きを取り戻しやすくなります。

さらに見落とされやすいのが呼吸です。緊張が強い子どもほど呼吸が浅くなりやすく、十分にリラックスできていないことがあります。整体では胸郭や横隔膜の動きにも注目し、自然に深い呼吸がしやすい体づくりを大切にします。

やさしい施術で緊張をゆるめ自然治癒力を引き出す

起立性調節障害のある子どもは、体がとても敏感になっていることがあります。そのため、強く押したり無理に矯正したりする刺激が、かえって負担になる場合もあります。整体では、体の状態に合わせたやさしい施術が大切です。

やさしく触れる、無理のない範囲で動かす、心地よい刺激で体をゆるめる――そうした施術によって、過剰な緊張が抜け、神経が安心しやすい状態へ変わっていきます。体が安心すると呼吸も深くなり、血流も整いやすくなります。

また、整体の時間そのものが「頑張らなくていい時間」になることも大きな意味があります。学校や家庭で無意識に緊張している子どもにとって、安心して体を預けられる時間は、心の回復にもつながります。

もちろん、整体だけで全てが改善するわけではありません。生活習慣、睡眠、食事、ストレスケアなどとあわせて取り組むことで、より良い変化が期待できます。整体は、乱れた体を無理に変えるものではなく、本来備わっている自然治癒力が働きやすい環境を整えるサポートなのです。

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