「学校には行けないのに、遊びには行けるなんてどういうこと?」――起立性調節障害のお子さんを見守る親御さんの中には、そのような疑問や戸惑い、時には怒りや不安を感じている方も少なくありません。朝になると起き上がれず、学校は休むと言っていたのに、午後になると友達と遊びに出かけたり、休日には元気そうに過ごしていたりすると、「本当に体調が悪いの?」「ただ学校に行きたくないだけでは?」と思ってしまうのも無理はないことです。

また、こうした様子は家族だけでなく、学校の先生や周囲の人からも誤解されやすく、「甘え」「怠け」と見られてしまうこともあります。しかし、起立性調節障害は気持ちの問題だけではなく、自律神経の働きが乱れることで起こる身体の不調です。そのため、時間帯によって体調に大きな差が出たり、活動内容によって動ける・動けないが変わったりすることがあります。

さらに、学校という場所には勉強、人間関係、集団生活、将来への不安など、本人にしかわからない大きなストレスが隠れている場合もあります。一方で、遊びや好きなことは気持ちが前向きになりやすく、心身のエネルギーが出やすいこともあります。こうした背景を知らないまま責めてしまうと、本人の自己肯定感を下げ、回復を遠ざけてしまうことにもなりかねません。

この記事では、「なぜ起立性調節障害なのに遊びには行けるのか?」という疑問について、身体と心の両面からわかりやすく解説します。あわせて、ご家族がどのように関わればよいのか、回復を支えるためにできることについてもお伝えしていきます。

起立性調節障害とは?

起立性調節障害とは、主に思春期の子どもに多くみられる、自律神経のバランスの乱れによって起こる体調不良のことです。自律神経は、私たちの意思とは関係なく、血圧・心拍・体温・呼吸・消化などを自動で調整している大切な神経です。この働きがうまくいかなくなると、朝起きられない、立ちくらみがする、疲れやすいなど、さまざまな症状が現れます。

特に成長期は、身体の急激な変化やホルモンバランスの変動、生活リズムの乱れ、ストレスなどの影響を受けやすく、自律神経が不安定になりやすい時期です。そのため、小学生高学年から高校生くらいまでのお子さんに多くみられます。決して珍しいものではなく、多くのご家庭が悩んでいる症状のひとつです。

代表的な症状には、次のようなものがあります。

  • 朝なかなか起きられない
  • 起きても頭痛や吐き気がある
  • めまい・立ちくらみがする
  • 身体がだるく疲れやすい
  • 食欲がわかない
  • 腹痛や気分不良がある
  • 集中力が続かない
  • 午前中は動けないが午後から元気になる

こうした症状は、周囲から見るとわかりにくいため、「サボっているだけ」「気持ちの問題」と誤解されることもあります。しかし、本人は怠けているわけではなく、身体が思うように動かず苦しんでいるケースがほとんどです。

また、起立性調節障害の大きな特徴は、一日の中でも体調に波があることです。朝はつらくても午後になると少し楽になったり、日によって元気な日と動けない日があったりします。この“波”があることが、「遊びには行けるのに学校には行けない」と見える理由のひとつでもあります。

起立性調節障害で遊びには行けるのはなぜ?その理由を解説

起立性調節障害は午後になると遊びに行けるほど体調が回復しやすいから

起立性調節障害のお子さんは、朝に症状が強く出やすく、午後から少しずつ体調が上向いてくることがよくあります。朝は自律神経の働きがうまくいかず、血圧や心拍の調整が乱れやすいため、起き上がるだけでも強いだるさや頭痛、めまい、吐き気などを感じることがあります。そのため、登校時間になっても身体がついていかず、学校へ行けない状態になることがあります。

しかし、そのまま一日中つらいわけではありません。時間が経つにつれて身体が少しずつ活動モードに切り替わり、血流や神経の働きが安定してくることで、午後には動けるまで回復するケースがあります。午前中は寝込んでいても、夕方には会話ができたり、外出できたりすることも珍しくありません。

周囲から見ると「朝は行けないのに午後は遊びに行けるなんておかしい」と感じるかもしれませんが、これは本人の気分次第で変わっているわけではなく、身体のリズムによって起こるものです。起立性調節障害を理解するうえで、この時間帯による体調の差を知っておくことはとても大切です。

起立性調節障害で学校に行けないのに遊びには行けるのは学校の負担があるから

学校には、勉強や宿題、テスト、人間関係、集団生活、決められた時間に行動する緊張感など、さまざまな負担があります。元気なときには当たり前にこなせることでも、体調が不安定な状態では大きな負荷となります。本人が口に出していなくても、「授業についていけない不安」「友達との関係」「先生とのやり取り」など、見えにくいストレスを抱えていることもあります。

また、一度学校を休む日が続くと、「久しぶりに行きづらい」「みんなにどう思われるだろう」といった心理的なハードルも高くなりやすくなります。身体の不調に加えて心の負担も重なることで、学校へ向かうこと自体がとても大変になってしまうのです。

一方で、遊びは自分で選んで参加できる活動であり、安心できる友達と過ごしたり、好きなことに集中できたりする時間でもあります。楽しい予定があると気持ちが前向きになり、心にエネルギーが生まれます。その結果、一時的に身体が動きやすくなることがあります。これは甘えや怠けではなく、心と体が深くつながっているからこそ起こる自然な反応なのです。

起立性調節障害で遊びには行ける子どもを責めてはいけない理由

怠けではなく起立性調節障害という自律神経の不調で起きている

起立性調節障害で「学校には行けないのに遊びには行ける」という様子を見ると、どうしても周囲は「怠けているのではないか」「気分の問題ではないか」と感じてしまうことがあります。しかし、起立性調節障害は意志や根性の問題ではなく、自律神経のバランスが乱れることで起こる身体の不調です。

特に朝は血圧や循環の調整がうまくいかず、起き上がるだけでも強いだるさや頭痛、めまいなどが出ることがあります。そのため、登校時間には動けない状態になってしまう一方で、時間が経つと少しずつ身体が回復し、午後には外出できる程度まで戻ることもあります。

このように「時間帯によってできることが変わる」という特徴があるため、学校には行けなくても遊びには行けるという状況が起こります。これは甘えではなく、起立性調節障害に見られる体調の波の一つです。

責めることで起立性調節障害の症状や自己否定感が強くなることがある

起立性調節障害の子どもは、自分でも「行きたいのに行けない」という葛藤を抱えていることが多く、すでに罪悪感や無力感を感じているケースも少なくありません。そこに「遊びには行けるのに学校は無理なの?」と責めるような言葉が加わると、本人の心の負担はさらに大きくなってしまいます。

起立性調節障害はストレスの影響を受けやすい特徴があるため、精神的なプレッシャーが強くなることで、自律神経の乱れが悪化し、症状が長引くこともあります。つまり、責める対応は改善とは逆の方向に働いてしまう可能性があるのです。

また、遊びに行けたという行動は「少し動けるようになってきているサイン」であることもあります。その小さな回復の兆しを否定されると、「自分はわかってもらえない」「どうせできない人間だ」と感じてしまい、自己肯定感が下がる原因になります。

起立性調節障害の改善には、身体面だけでなく安心感や心理的な安定も重要です。そのため、「なぜできないのか」を追及するよりも、「今はそういう体調の波がある時期なんだ」と理解し、見守る関わり方が回復を支える大切なポイントになります。

起立性調節障害で遊びには行けるときに親ができる対応

まずは起立性調節障害の「体調の波」を理解することが大切

起立性調節障害では、毎日同じように体調が安定するわけではなく、朝は動けないのに午後には元気になるなど、時間帯や日によって大きな波があります。この「波」を理解せずに見ると、「学校は無理なのに遊びには行ける」という矛盾に見えてしまい、つい厳しい言葉をかけてしまうこともあります。

しかし実際には、身体の状態がその時々で変化しているだけであり、本人の意思でコントロールできるものではありません。まずはこの前提を親御さんが理解することが、対応の第一歩になります。

遊びに行けたことを責めず回復のサインとして受け止める

起立性調節障害のお子さんが遊びに行けたとき、「それだけ動けるなら学校にも行けるでしょ」と言いたくなる気持ちが出ることもあります。しかし、その言葉は本人にとって大きなプレッシャーとなり、症状の悪化につながることもあります。

遊びに行けるという行動は、見方を変えれば「少しエネルギーが戻ってきているサイン」であることもあります。そのため、無理に学校と結びつけて判断するのではなく、「今日は少し動けたんだね」と事実として受け止める関わり方が大切です。

安心できる環境の中では体が動きやすくなることもあるため、否定よりも肯定的な受け止めが、結果的に回復を後押しすることにつながります。